36: ◆m03zzdT6fs[saga]
2013/06/18(火) 17:52:02.89 ID:gq9TOo4jo
『あー、実は重大なお知らせがあってな』
「お知らせ、ですかー? 楽しみです♪」
ふふ、と笑う彼女の表情は、本当に楽しそうで、嬉しそうだった。傍にいるだけで幸せになれる様な、そんな表情。可能なら、ずっとその顔を見て居たかった。
だが、それは無理なのだ。
『茄子さんの移籍が決まりそうだ。移籍先は、シンデレラガールズ・プロダクションと言う所だ』
「……え?」
その表情が、完膚なきまで叩き壊れる。茄子さんの目には、うっすらと涙さえ浮かんでいる。罪悪感で胸の内が支配されていくが、それでも俺は続けた。
『こんな小さな事務所で終えられるほど、茄子さんは小さな存在じゃない。俺では、君をトップアイドルにしてあげられない。……分かってください、茄子さん』
「……ぴ、Pさんったら、冗談がお上手なんですからー♪ 騙されませんよー?」
彼女は笑顔を作る。それが作られた笑顔だと、分かってしまう自分が滑稽で、見苦しい。それほど彼女のことで頭がいっぱいだった自分が、今こうやって彼女を苦しめている。
『……すまない、茄子さん』
笑顔が痛かった。だから、それを早く終わらせたかった。全てが、俺のエゴだ。彼女を苦しめているのも、この移籍も、彼女をアイドルに引き込んだのも。それを理解していてなお、止めるつもりはなかった。
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