63: ◆m03zzdT6fs[saga]
2013/06/23(日) 01:25:15.91 ID:VUQNs9y0o
(茄子さんが、トップアイドルになれますように。あとは――彼女が幸せになれますように)
そう、祈った。彼女は運がいい。実際、一緒にいたときは何度も、運のよいことがあった。失くしたと思っていた物もよく見つかったし、一度だけだが懸賞にも当たった。彼女が入れてくれるお茶は、しょっちゅう茶柱も立っていた。
だが、そんなことなんかよりも、彼女と出会えたことが一番の幸運だ。人生で一番幸せだったと、言ってもいいのかもしれない。
ただ、俺が幸せになっても意味がない。彼女が、茄子さんが幸せでなければならない。きっと、それはトップアイドルになるのが一番手っ取り早い事だろう。
彼女は、実力がある。だが、トップアイドルになるには、実力だけではない。運もいる。実力だけではどうにもならない。それを、俺はよくよく知っている。
『……はは』
乾いた笑いしか出ない。神なんて信じるつもりはあまりないが、それでもせめて彼女にだけは微笑んでくれ。そう思って、俺は小さく息を吐く。
もう、これ以上はよそう。そう思って俺はカバンを握りなおし、踵を返す。ざり、ざりという参道を踏みしめる革靴の音が響いた。
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