過去ログ - これからぼくが自殺する部屋
1- 20
8: ◆ty8oEf4R2M[saga]
2013/06/14(金) 14:48:22.37 ID:syUJYszq0

二十分ほど電車に揺られた先の駅では、誰もが忙しなく行き交っていた。

駅に設置されている地図を見ながら、ぼくは四番出口を探した。
そこを上がると、目の前には、大きな大学の校舎が見えていた。

ええと、確か。この大学の向かいの喫茶店。そこの、一番端の席だった。

ぼくが後ろを振り向くと、こちらをみている女性がいた。
ああ、彼女が咲坂未来だろう。遠目から見ても彼女は美人だった。
彼女の表情を確認し、対面の席に腰掛け、アイスコーヒーを店員に頼んだ。

「遅れてごめん。ちょっと、道に迷っちゃって」

「いえ」

彼女はそれから、しばらく口を開かなかった。
それが一瞬だったか、数十分だったかは定かではない。
次に彼女が口を開いたのは、コーヒーが運ばれてきてからだ。

「真也さん、コーヒーをお飲みになるんですか」

しまった、とぼくは心の中で舌打ちをしていた。
無難だろうと思っていたが、綴真也の好みではなかったか。
彼女は静かにぼくに視線を向け、ぼくは下を向いている他なかった。

「最近。いえ、ここ三週間ほど。皆さん、明らかにおかしくなっています」

「真也さんは大丈夫。そう思っていましたが、そうではないようです」

「同じようになるのでしょうか、私も。死ぬのでしょうか」

彼女は誰かに問うたわけでもないかのように、そう呟いた。
私も。彼女はそう言った。文脈から考えるに、何人も自殺している?
それは、ぼくの担当している六名の事だろう。残ったのは二人。最後の二人か。

「大丈夫だよ。ぼくは、死ぬつもりなんてないし、死なせもしない」

言ってから後悔した。綴真也はこのような物の言い方はしなかった。
もっと合理的で、理路整然としていた性格だったはずだ。
彼女は唖然としたように、ぼくに言った。

「ふふっ。真也さんは、いいように変わっちゃったのでしょうか」

「なんだか、そっくりです。懐かしい感じがします」

「ぼくは、誰に似ているのかな」

「それはもちろん。決まっています」





「咲坂悠一に」




<<前のレス[*]次のレス[#]>>
243Res/276.44 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice