過去ログ - ムラサメ研究所を脱走してきたニュータイプ幼女たちが…
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82: ◆EhtsT9zeko[saga]
2013/06/18(火) 22:20:56.17 ID:KMbg4rxB0
 「マークさん、私、怖い…」

ニケが小声でそう囁いてくる。



「大丈夫だ。ちゃんと俺につかまってろ」

俺はそう言いながらニケの頭をなでてやる。ニケはそうした俺の目を、涙目でじっと見て、口をへの字にしながら、うなずいた。

「そっちは、大丈夫か?」

俺はレオナとハンナに聞く。

「サビーノは泳げるらしいから、平気だと思う。私とレオナで、エヴァとサラを連れて行くよ」

ハンナが答える。

 俺の考えた作戦は、いや、これを作戦、と呼ぶべきか、まだ悩むところではあるが、とにかく、だ。

テラスにあった救命胴衣を着て、ここから、軍のトラックの中から持ち出してきた装備品の中にあったロープを使って海面に降りて、

闇夜の海を泳いで、警戒網が敷かれている港から離れた陸地にあがる、それだけだ。

 この船はかなりのサイズだ。端から端まで目を行き届かせるのは難しいし、なにより、この時間だ。

海面は真っ暗で、こちらが暴れたり、派手な色を身に着けたりしていなければ、確実に紛れることができる。

この手の方法は、一応、情報士官らしく、一から十まで訓練ではこなしている。

夜間に敵地への諜報活動のために、侵入する訓練だが、

そもそも、地球連邦の支配地域であるこの地球に、一体全体、どうして海に紛れて諜報活動をしにいく必要があるかは疑問なのだが、

それも、8年前の戦争で、支配そのものが盤石ではないと、暗に悟っている部分があるからかもしれない。

 船が岸に着岸して、もう20分経つだろうか。外の方が、一段と騒がしくなってきている。

乗客がおり始めているんだ。このタイミングがベストだろう。

 ロープをつかんで、テラスの柵を乗り越える。胸を押しつぶすような緊張感が俺を襲う。だが、潰されるわけには行かない。

大きく深呼吸して、気分を整える。

 それから俺は、ハンナとレオナにかぶりを振って、結び目をつけて握りやすいようにしたロープを漆黒の海面に向かって降りて行く。

高さは、7,8メートルと言ったところか。慣れないと、一番怖さを感じる高さではある。ニケたちのことが気にかかる。

 上を見上げると、ハンナがこっちの様子を覗いていた。合図を出して、子ども達を下ろさせる。

 俺は海面に到着して、そっと海に入る。海水は思ったほど冷たくはない。11月だ。こっちは、初夏を過ぎたころ。

まだ暖かくはないと思っていたが、これならすこし安心できる。

 まず最初に、ニケが降りてきた。海に入るのをためらっているニケをそっと抱きとめて海水の中に迎え入れる。

思っていたほどでもなかったのか、ニケは少し意外そうな顔をして俺を見た。

「怖いか?」

俺の救命胴衣の裾をつかんだニケに小声で聞いてみると彼女はかすかに笑って

「大丈夫」

と囁き声で返事をしてきた。



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