過去ログ - 恵美「もし私が日本に馴染めなかったら」
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3:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2013/06/15(土) 22:43:19.10 ID:aEntuCFko
空き時間のほとんどを魔王探索に費やしたが、魔力の欠片も見つからなかった。
彼らの化け物然とした姿を思えば、自分のように人間社会に溶け込むこともできまい。
もしかすると既にどこかで野垂れ死んでいるのだろうか?
ならばいっそこの世界に腰を落ち着けることを考えたほうが建設的なのではないだろうか?
そんな考えがよぎりながらも、彼女は勇者であることをやめられなかった。
魔王を倒し、父の敵を討つことだけが彼女の生きる目標だったのだから。

そんな心の拠り所のない状態で続けるには、テレアポの仕事は過酷なものだった。
彼女にかかってくるのは、携帯電話についての質問やクレームだ。
説明書を端から端まで読めと叫びたくなるような質問から、
耳を塞いで無視したくなるような罵詈雑言まで、様々な負の言葉を毎日浴びせられ続けた。
その全てに彼女は丁寧に応対し、上司の評価は高かったが、代わりに何かが摩耗していく感覚があった。

なぜ私はこんなくだらないことをしている。
聖剣を手に、悪魔達に立ち向かうのが私の使命であるはずなのに。
その思いは、生きていくために必要な業務以外の全てへの積極性を彼女から奪っていった。
今の彼女には、友も、楽しみも、何もかもがなかった。
かろうじて残っている憎しみだけが彼女を生かしていた。


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