過去ログ - 恵美「もし私が日本に馴染めなかったら」
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5:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2013/06/15(土) 22:44:16.47 ID:aEntuCFko
それは、偶然だった。

出社途中に降りだした唐突な雨。折りたたみ傘もなく、道端で雨宿りをしていた。
天気まで私を虚仮にするのか、と心中で憂鬱さを覚えていると、

「よかったら、これ」

恵美「……え?」

「いきなり降ったから困ってるんじゃないかと思って」

そう言って恵美に傘を差し出す青年がいた。

青年は恵美に傘を貸し、濡れながら自転車で去っていった。
その背中を見送る恵美の顔は、普段の無表情でも、感謝の表情でもなかった。
そこにあったのは疑念と、驚き。

恵美(……姿はまったく違う。一見、ただの日本人だった。けど)

恵美(微かに感じた今の波動は……まさか、魔力?)

***

恵美は終業後、本屋で立ち読みをしていた。
無論目的は立ち読み自体ではない。
恵美の視線は本屋の向かいにある、マグロナルド幡ヶ谷店に向いていた。

先ほど彼が言ったとおり、今朝の青年はマグロナルドで働いていた。
時折手の空いたとき、ツインテールの可愛らしい店員と仲が良さそうに話している。
声は聞こえないが、その笑顔と機敏な動きから、彼が精力的に働いていることは見て取れた。
日々無気力に生きている自分とは大違いだと恵美は自嘲した。

恵美(……気のせい、よね? あれが魔王であるはずがない)

そう思いつつも、恵美は動かなかった。
この世界に来て、初めての手がかりかもしれないのだ。
彼女の中に残された最後の感情、怒りと殺意が彼女をそこに留めた。


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