6:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/06/23(日) 06:06:23.28 ID:Skjo5kRHo
「ふむ、何はともあれまずは仕事を探さなきゃいけないわねぇ…
働かざる者は食うべからず。これはどんな世界でも共通のことわざね」
先日借りたばかりのマンションの一室にて、
そんな事を言いながら恵美はパラパラと求人紙をめくる。
ちなみに部屋には近所のボン・キホーテで購入した格安の布団と
申し訳程度の机が置いてあるのみの、少女の一室とは思えないぐらいの殺風景具合である。
それも仕方がない。彼女が警察官から拝借したお金も残り少ないのだ。
「……しまった。これなんて読むの?ああ、製造業ね。派遣?なるほどね」
「派遣ねぇ…。体良く書いてあるけどこんなの人身売買じゃない。
ああ、やっぱりこの世界でも問題になったことあるの?そりゃそうよねぇ」
一見すると彼女はいったい誰と話しているのか?
それこそ妄想癖でもあるのかと疑ってしまう状況なのだが
恵美には立派な話相手がいた。幽霊である。
概念送受(イデア・リンク)を用いた会話手法を基本とする事により、
彼女は幽霊とも話すことが可能であった。
この概念送受が非常に便利な存在で、全く異なる言語をお互いに話していても
実際には同じ言葉を喋っているように相手には聞こえる。これを利用することで
恵美は流暢な日本語をすぐにモノにした。勿論、外国語も同様であり
英語だろうがフランス語だろうが北京語だろうが、彼女は容易に習得出来るであろう。
「うーん、なんかどれもパっとしないわね…」
今度こそ恵美はひとり言を発する。
幽霊に補足を入れて貰いながら読んでいても、それがどんな仕事か
イマイチイメージが掴めないのだ。彼女にはそのどれもが経験にない。
仕方のない事だった。
「あとは、聖法気もなんとかしなきゃいけないし」
彼女は僅かに残る聖法気を何とか体内に押し留めているが、これの回復も急務だった。
いくら日本に魔法の類が存在しないにせよ、魔王の力は強大だ。
きっと魔翌力を温存しているに違いないと恵美は推測していた。
「聖法気の補給…、この世界でも当てがない訳じゃないけど
これは勇者としての尊厳が…」
そんな事を呟きながら、恵美はエンテ・イスラでの旅を思い出していた。
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