141: ◆.g97gKoujg[saga sage]
2014/08/04(月) 01:44:45.99 ID:FySASW9O0
――帰る事ができるのか?
凉一の脳裏に別れ際に交わした茨木の言葉がよぎる。
そして、マリアヴェルの必至な訴えも――
――ハンターだけではない、我々のような者は他の妖物も引き寄せる場合も……いや、キミ自身が家族を襲う可能性だって……
あの時の彼女の言葉に嘘はないと凉一は信じている。
優しい祖父母は、たとえ凉一が人でなくなっていても受け入れてくれるだろう。
日の下に出られなくても、学校に通わなくとも、変わらずに愛情を注いでくれる……そんな人達だ。
凉一の手はそんな優しい人達の血に塗れるかもしれない――
「帰れるわけ……無い」
喉が詰まるような熱いものが、頭の芯まで昇ってきたのを感じた時には、すでに涙が堰(せき)を切っていた。
(ボクは何をしているんだ!? ベルの忠告を無視して、吾妻さんの信頼を裏切って……じいちゃんやばあちゃんまで裏切るかもしれないなんて!)
むせび泣く凉一の嗚咽をかき消すように、雨は強さを増していった。
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