140: ◆.g97gKoujg[saga sage]
2014/08/04(月) 01:39:49.54 ID:FySASW9O0
子供の頃から見馴れているシャッターには『比良坂建具』の文字、祖父の仕事場が併設されている凉一の生家はいつもと変わらずそこにあった。
――懐かしい。
たった一晩帰らなかっただけで、そう思えるのは凉一の身に起きた現実味の無い数々の体験のせいだろう。
熱くなる目頭を堪えて玄関に目を向けた時、凉一は愛しい人影を見つけた。
「……ばあちゃん」
玄関先の路上に祖母はいた。
シトシトと降りしきる雨の中、藤色の傘をさして……孫が帰って来るであろう方角を見据えてじっと待っている。
時々、通り掛かる凉一と似た背格好の通行人に反応しては、人違いである事に落胆して……凉一の帰りを心配そうに待っている。
凉一は居ても立ってもいられずその場を駆け降り祖母の元へと駆け寄ろうとしたが、その足は急に止まってしまった。
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