3: ◆.g97gKoujg[saga sage]
2013/06/23(日) 22:36:33.00 ID:gCMU1BRF0
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「御館様?」
茨木尊【いばらき たける】は湯浴み後に縁側で涼んでいるはずの主人を探していた。
いつものようにお茶を淹れてきたのだが、その姿はなく代わりに彼女が着ていた浴衣の帯だけがポツンと残されていた。
風が吹き満月を覆っていた群雲がはれて庭先を照らす。
(月に酔われたか……)
茨木が仕える主人は満月の夜になると、夢遊病患者の様にふらりと外へ出ていく事がある。
もう一度気配を探ってみたが、やはりこの屋敷に主人は居ないようだった。しかたなく茨木は固定電話の受話器を取った。
『いかがなされました?』
三回ほどコールしてから老人の声で返事があった。
「御館様がお出掛けになられた。迎えに行く」
『今宵は満月でしたか……』
茨木が用件を伝えると、受話器の向こうでも事情を察したらしい。
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