52: ◆.g97gKoujg[saga sage]
2013/07/08(月) 00:11:51.73 ID:ct577/i/0
十分程経った。悲しみの吐露が治まりつつある少年は目尻に溜まった涙を手で拭いながら不服そうに呟いた。
「……聞こえなかった」
「まあ、そうだろうな」
「グスッ……ヒグッ」
にべもなく返すマリアヴェルの言葉に少年は再びしゃくり上げ始めた。
「おい、泣くな!……悪かった。私が悪かったから!泣くなよ!」
これ以上泣かれては堪らない……マリアヴェルは必至に少年をなだめながらも『思い遣りが欠けていたかもしれない』と反省していた。
「すっきりした」
「……そうか、それは良かったな」
なんとか泣き止んだ少年は鼻を啜りながら呟いた。悲しみの感情を吐き出して冷静になったのだろう。兎に角、泣かないのなら何でも良い……マリアヴェルは安堵した。
「お姫さまは……」
少し気まずい沈黙が流れた後、少年おもむろに切り出す。
「お姫さまは、会いたい人はいないの?」
「…………」
マリアヴェルは答えない。
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