53: ◆.g97gKoujg[saga sage]
2013/07/08(月) 00:16:52.28 ID:ct577/i/0
マリアヴェルに逢いたい人がいない訳ではない。
例えば、今はもう亡き母。彼女はマリアヴェルに深い愛情を注ぎ、沢山の大切な教えを残してくれた。
例えば、顔も名も知らぬ父。母はあまり父の事を語らなかった。声だけでも聴けるものなら聴いてみたい。
例えばーー。
マリアヴェルは考えるのを止めた。意味の無い事だ。もう【彼女】に逢う事は出来ない。
「お姫さまも呼んでみたら?」
そんなマリアヴェルの気も知らず少年は奨めてきた。
「私は……いい」
「……すっきりするよ?」
断りを入れるマリアヴェルに少年は食い下がる。
「くどいぞ。返ってきたのは山彦だけだったろ!」
マリアヴェルは頑なだった。
「…………グスッ」
「おい!泣くな!泣くのはズルいぞ!」
またもや泣き出した少年にマリアヴェルは慌てた。そして、
「……解った。私もやるから泣くなよ」
遂に折れた。マリアヴェルは『泣く子と地頭には勝てない』という人間の格言がある事を思い出した。
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