70: ◆.g97gKoujg[saga sage]
2013/07/17(水) 00:44:22.87 ID:N5uHPkoG0
「キミはもうすぐ死ぬ。遺言は……無理だろうから、せめて私がキミを看取ろう」
薄々感付いていたマリアヴェルの言葉に、凉一は然して衝撃を受けなかった。
(やっぱり僕は死ぬのか……じいちゃん……ばあちゃん、悲しむかな?)
凉一が思い浮かべたのは、家で自分の帰りを待つ祖父母の事だった。
凉一が両親を交通事故で亡くしたのは彼が九歳の時。まだ幼い凉一は『死ぬ』という意味を正しく理解出来ないながらも、両親が突然居なくなった事に深く悲しんだ。
思えば祖父母の悲しみの方がより深いものだったのかもしれない。凉一よりも長い時間を過ごした息子と、息子が愛した人を一度に失ったのだから。
(そんな思いをまた二人に味会わせるのか……)
凉一は咳き込みながらもマリアヴェルに答える。
「ゴホッ……いや……だ」
――せめて、二人に今までの感謝とお別れの言葉を言いたい。
「なんだと?」
マリアヴェルは凉一の言葉を聞き間違えかと思ったように、もう一度彼に聞き直した。
「死にた……く……ない」
「無理だ。キミはもう助からない……血が流れすぎている」
マリアヴェルは冷徹に言い放つが、血返吐を吐きながらも凉一は死にたくないと訴え続ける。
141Res/100.93 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。