92: ◆.g97gKoujg[sage saga]
2013/09/04(水) 00:12:02.43 ID:++umEKco0
マリアヴェルが部屋から去った後、凉一は彼女の言葉を反芻する。
「陽光の元での……最後の思い出……大切に……」
「忘れたほうが良い」
「!?」
口から漏れ出た言葉への予期せぬ返事に凉一はびっくりして辺りを見回すと、部屋の角に異様に長身の男がたたずんでいた。
何時からそこに居たのだろうか? その長髪から覗く切れ長の眼は獲物の動きを伺う猛獣を思わせる――。男は再び口を開いた。
「御館様……マリアヴェル様はその思い出を大切にしろと云っていたが、それでは日の光に未練が残る」
「未練を残さないで……忘れろって?」
「そうだ」
男の忠告はもっともだ、全てが真実ならば……しかし『貴方は吸血鬼になりました』と言われたからといって素直に信じられるものでもない。
例え、負ったはずの傷が塞がっていようともだ。
「誰だ、あんた!?」
「ほう、急に威勢が良くなったな」
段々と調子を取り戻してきたとみえる凉一に、男は愉快そうに口の端を吊り上げた。
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