9:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/06/27(木) 22:37:30.33 ID:Mi8zjoZEo
「ありがとうございます、プロデューサーさん」
翠にもしたように、お茶と、ついでにもう遅いだろうがタオルを渡すと、ゆかりは柔和な笑みを浮かべる。
まだまだ風貌は幼いが、言動や思考といった面では少女の範疇を既に超えている。
…あと、思わせぶりな態度を取らせれば事務所でも随一だろうとも思う。
プロデューサーたる俺ですら、何度ドギマギさせられたことか。
ゆかりの魅力を十分に知っているからこそ、男としてその気にさせられそうになるのだ。
「……鏡、でしょうか」
俺の視線をよくわかっていないような素振りで首をかしげるゆかりの反対側、翠が幾分が唸った後で一つ呟いた。
「鏡…って反射する?」
雨の色を問われて鏡を答えるのは理由次第では大変興味深い。
色ではないという指摘は趣がないと言えるだろう、続きを促すと翠はぽつぽつと言葉を漂わせる。
「ゆかりさんの回答は、あくまで見る人によって思う所が違うので、雨自体が変化している、という考えでした」
「はい、その通りです」
俺と同様、翠の声に耳を傾ける。
新たな視点を知るという事は誰だって面白く感じるのだろう、ゆかりの表情も知的好奇心に溢れていた。
「ですが、いくら感じる内容が変わろうとも雨は雨でしかなく、結局雨はただの水ですから、変わっているのは雨ではなく見る人自身なのだと思います」
ゆかりの意見と違うのはそこか、と一人納得する。
雨は白色であり、見る人によって雨が変化するとなると雨は雨でなくなってしまう。
仮にそれを採用するならば、雨ではなく『降ってくる微小な水滴の群れ』と表現すべきだ。
そこで矛盾が無いように考えると、変わっているのは見る側の人間なのだ、ということらしい。
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