過去ログ - 響「National Holiday」
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28:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/07/01(月) 20:34:48.24 ID:eKVRquV80

 結局従者である自分は肉を焼きに足を動かしていた。
ショッピングモールを抜け、少し歩く。

 秋の空は突き抜ける様に高く、穢れひとつない青空から降る日が地面に二つの影を作っていた。
片方の影が近づいたり離れたり。リズムを取るように揺れている。

P「……焼肉がそんなにうれしいか?」

響「焼肉がうれしいんじゃないぞ」

 肉問答を繰り返しながら目的地に向かう。
きっと響の頭の中ではすでに熱されている銀の金網と湯気を立てる白米。そして金網の上で踊るカルビが見えているのだろう。

 腹の虫の鳴き声を殺していると、ショッピングモールへ向かう車の列が目に入った。
信号待ちをしている車は思い思いの時間の潰し方をしている。それぞれの車が一つの幸せの形のように思えた。

 白いワゴンが目に留まる。窓ガラス越しに家族が歌っている。

響「お、やよいの歌だな」

P「ほんとだな」

 穢れを知らないような笑顔、幼稚な歌声は人の心を洗うようで。前の席の両親も幸せそうに笑っていた。
それぞれの、十人十色な幸せの形。そんな幸せを皆歯を食いしばって目指すのだろう。

 まるで印象画のような、幸福の色彩に彩られた世界が瞳に焼き付く。

P「……生きてるっていいもんだな」

 今日はよく、心の声が漏れる日だった。

響「当たり前だぞ。……当たり前だぞプロデューサー」

 道路に伸びる影の手が、自分の袖をギュッと掴んだ。

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