4: ◆hOVX8kZ7sLVS[saga]
2013/07/02(火) 22:23:19.51 ID:bAq3pyUe0
「じゃあ、行ってくるから。留守番任せたわよ」
気付けば僕は幼少期からお留守番という言葉と同居していた。
そんなわけで、僕は寂しかったが、寂しくなかったのである。
毎日鏡と顔を合わせ、必要以上に化粧をし、高い服を着て出て行く。
電話が鳴ると、猫撫で声と勘違いするような声を出しているのだ。
あまり頭の良くない僕でも、一般家庭のお母さんとの違いは判った。
「ねえ、どうして僕にはお父さんがいないのかな。言われたよ」
「そりゃ、サラ金から返せないもん散々引っ張った結果じゃないの」
とても保育園に通っていた子供に返すとは思えない言葉だった。
だが、僕はその時から、母親を心から信じるようになったと思う。
だって、やろうと思えば誤魔化せた。なのに、嘘をつかなかった。
「ていうか、あんた。お父さんほしい?ほしいなら、つくってあげる」
「いらないよ。お母さんいるし、それに、友達もできたんだ。大丈夫」
「そう。あんたに友達。珍しい事もあるじゃない。仲良くしなさいよ」
保育園の年長と呼ばれる辺りに至って、ようやく僕にも友達ができた。
それが前述で褒めちぎった友人の事である。未だに友人は一人だけだ。
けれど、最高の友人だと、僕は思う。
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