5: ◆NbftaqZN9I[sage]
2013/07/07(日) 11:07:38.50 ID:7RM6Sj950
【心配性?】
「雪歩、最近頑張ってるみたいだけど、大丈夫?」
事務仕事を片付けている時、ふと思い立ってそう言葉をかける。
雪歩はいつものように微笑んで。
「大丈夫ですよ。最近はいい調子なんです。ところで、律子さんの方はどうですか?」
「私?私はねぇ……ま、ぼちぼちってところかしら」
雪歩からの問いかけに、少し歯切れが悪くなる。
竜宮小町の活動自体は順調だけど、でもやっぱり停滞期って言うのはあるみたい。
最近は以前ほどオファーが舞い込む事も無くなった。
それはまあ、取捨選択をあまりしなくていいって事だから、楽ではあるのだけど……
「あんた達にも負けないようにしないとね」
「そんな……私なんてまだまだですよ……」
「こーら。そうやってすぐ自分を卑下しないの。雪歩は頑張ってるわよ。間違いなく、ね」
「そうですか……?えへへ…ありがとうございます」
照れ笑いを浮かべる雪歩を見ていると、以前よりも成長したなぁ、としみじみ思う。
前はもっとこう、褒められてもまだ謙遜してる感じだったけど。
今は自信がついてきたのかしらね。こうして素直に喜ぶ事も増えた。
それでも背中をひと押しされてから、なんだけどね。
「でも」
「なあに?」
「律子さんの方が、私よりもずっと凄いですよ。私にはプロデューサーなんて、とてもできませんから」
「そんな事は気にしなくていいのよ。誰にだって得手不得手はあるわ」
私の得手はこういう、誰かを見て分析する事。
ただ、自分に関してはその特技も当てにならないのが玉にキズかもしれないけど。
「雪歩のいいところは、そうやって自分の欠点をすぐに見つけられるところかもね。ただまあ、行きすぎるのも駄目だけど」
「あうぅ……おっしゃる通りです……」
「だからそんなに落ち込まないの。私は雪歩のいいところを一杯知ってるから。ね?」
「……はいっ!ありがとうございます!」
そう言うと、雪歩はレッスンに向かった。
全く、まだまだ心配しなきゃいけないみたいね。
なんて思っていたら、自分の机に湯気の立ち昇る湯呑が見えた。
「……雪歩の方が、一枚上手かしらね」
いつの間にか置かれていた湯呑を持って、一口啜る。
「美味しい……」
まだまだ私も心配される側なのかも。
「まあいっか」
心配されるのって、案外嬉しいものね。
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