過去ログ - 恵美「もしも魔王の正体に気づかなかったら」3巻
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37:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2013/07/06(土) 19:48:40.02 ID:6QX93pwdo
ゴンドラが登っていく。
貞夫は外を見るアラス・ラムスの背中に目をやってから、観念したように語り出した。

真奥「……昔、人から預かったんだよ。まだ俺が魔王どころか、ゴブリンに毛が生えた程度のクソガキだった頃にな」

それは、私が初めて聞く、彼の昔話だった。

かつての魔界は、違う種族同士で出会えば殺し合う、そんなところだったという。
その中で彼の一族は弱かった。
偶然出会った、たった一匹の悪魔に、彼の両親も含めて全滅させられるような。
彼自身も虫の息となった。

真奥「ところが、小汚い悪魔のクソガキの命を気まぐれに拾った奴がいたんだよ」

真奥「俺は、そのとき初めて天使って奴に会った。見たこともない真っ白な翼だった」

その天使は、虫の息ながら歯向かう貞夫を殺すでもなく、何度も会いに来て、色々な話をしたという。
傷が癒えるまでそうそう動けない貞夫はそれを否応なしに聞き続け、やがて一つの質問をした。
何故自分を助けたのか、と。
その理由は、

真奥「……泣いてたんだとさ、俺が。泣いてる悪魔なんて初めて見たから、ほっとけなかったんだと」

恵美「泣いてる理由は、なんだったの?」

貞夫が顔をしかめた。
どうも一連のこの話は、彼にとって苦い思い出のようだ。
視線をそらしながらぽつぽつと語る。

真奥「まあ、色々だ。別に親や係累の死が悲しかったとかじゃねぇ。強いて言えば……」

真奥「自分の弱さとか、自分があっさり死ぬ理不尽さとか、そんなもんに腹が立ってたからじゃねぇかな」


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