過去ログ - 幸子「優しい優しい、プロデューサーさん」
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◆S.3OfNv5Fw
[saga]
2013/07/15(月) 10:43:56.40 ID:rh9YQKQy0
さすがにずっと舞台袖にいる訳にもいかないので、私は関係者席へと移動する事にした。
一般客が入れる最上位の席とはまた違い、遠過ぎず近過ぎず、全体が見れる絶妙な位置にあった。
喧騒に塗れる事も無い。私はへりに立ち、体を手すりに預けてステージを眺めた。
愛海は望遠鏡を持ち、観客席で涎を垂らしながら会場を見ているとの事だ。それで良いのか。本人は良いらしい。
今度清良さんに愛海の面倒を見て貰おうか。
部屋の中では同僚達が何か、自分のアイドルの事だとか他所の事務所の事だとかを話していた。
愚痴や羨望、そして表面だけの称賛ばかりで、あまり聞きたいものでは無かった。
それを気にせず、ステージを見る。暗がりの中で、目的の人物をすぐに見つけた。
いつもファンに見せている澄ました顔で、彼女は立っていた。どうやら緊張感はいくらか解れてくれているらしい。
小さな体で、彼女はしかとあのステージに立っている。彼女は脆く見えるが強い子だ。私はそれを知っている。
むしろ、私の方が緊張しているのかもしれない。先程から、嫌な汗が体から噴き出していた。
「よう、緊張してるのか」
突然、同僚の一人が私に話しかけてきた。はっきりと友人と言える、数少ない人間であった。
この仕事の歴自体は彼の方が長いが、私と同い年である。
そのせいもあってか、何と言うか、彼は屈託の無い人間で私も付き合いやすかった。
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