過去ログ - 文才ないけど小説かく(実験)4
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59:組長(お題:二代目)3/4
2013/07/18(木) 22:00:07.21 ID:/9FKMm/Go
トイレの個室に入り、便器に座って、封筒を開ける。
『私、荒木吉郎は、荒木組2代目組長を、倉田義文に託す』
そう書いていた。ご丁寧に血判まで押して。
 だがどう見てもこれは荒木吉郎、つまり親父の字ではなかった。そして、倉田のあの発言。あの
時はやばいと思ったが……よく考えると、つまりあそこに何かあることを知っていたのだ。
自作自演だ。親父が死に、組員が集まって最後の別れをして、遺体をどけると枕の下から遺書が
出てくるという完璧なシナリオ。まったくとんでもない野郎だ。
しかし見つかってしまったのが運の尽き。悪いがこの偽遺書は握りつぶさせてもらう。さらに……。

「おーう」
俺が病室に戻ると倉田は顔を真っ青にしていた。残念ながら探しものは永遠に見つかることもない
が。
「おまえやっぱりあっちの応援行ってくれねぇか?」
「は?」
「いやー、親父が心配なのはわかるがな? さっき便所で電話かかってきてなぁ、やっぱり下っ端
ばっかじゃどうにもならないって。ただでさえ親父が大変なのにこれ以上組の厄介事増やすのもあ
れだしなぁ」
もちろん嘘だ。しかしこいつにはさっさとどこかへ行ってもらう必要がある。
「い、いやでも……」
「だーいじょうぶだって。俺が見とくから」
倉田はしばらくなにか理由を考えていたようだが、何も思いつかなかったらしい。小さい声で「わ
かりました」と答え、出て行った。

 完全に倉田の足音が消えたのを確認して、俺は封筒を取り出した。もちろん中身は変わっている。それをゆっくり、慎重に親父の枕の下に差し込む。中指まで使って完全に置くまで突っ込み、また
ゆっくりと指を引き抜く。
「もう苦しむことはないぜ」
やはり返事はない。俺は青いマスクに手をかけた。慎重にそれを下へずらしていく。


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