737:道祖神のお導き(お題:鏖)3/11[saga]
2013/10/13(日) 08:38:28.16 ID:t/0x6c1+o
うねうねとした山道をずっと歩いていると分かれ道にぶちあたった。分かれ道の中心に道祖神らしき石像が倒れ
ている。
さてどっちが村に続く道だろう? と庄助が立ち止まって考えていると、道祖神の右側に続く道の方から、籠を
背負った貧相な身なりの老人が姿を現した。
「おお? どちらさんだね」
738:道祖神のお導き(お題:鏖)4/11[saga]
2013/10/13(日) 08:39:05.86 ID:t/0x6c1+o
老人はぬっと芋を庄助に差し出した。もちろん生で食えということではないだろう。村までついてきて、食わせ
てくれるということだ。しかし、全く疑いもせず、食べ物まで分け与えるというのは、それだけ村が豊かなのだろ
うか。台風の影響で、作物が駄目になった村もあると聞いていたので、庄助は意外に思った。しかし渡りに船とい
うべきか、庄助にとっては思わぬ幸運であるに違いない。
「それでは村まで案内してくれるか、じいさん」
739:道祖神のお導き(お題:鏖)5/11[saga]
2013/10/13(日) 08:39:48.13 ID:t/0x6c1+o
老人のあとをついてしばらく歩いているうち、庄助はふと「この老人も賊に襲われるのだ」と思い至り、同情の
念が湧くと同時にあまり知り合わないようにしようと決めた。
だんだんと道が広がって来てようやく人里に着いたらしい。山の麓まで降りて来たようで、道が平坦になった。
すると道の脇に巨大な釜が現れた。
「じいさん、こりゃなんだ。焼き物でも作るのか?」
740:道祖神のお導き(お題:鏖)6/11[saga]
2013/10/13(日) 08:40:58.00 ID:t/0x6c1+o
老人はやけに庄助を気に入った様子で、もてなさないと気が済まないとでも言わんばかりだった。飯を食ってか
らでも遅くあるまい、と庄助はあっけなく老人に付いていくことに決めた。
朽ちかけた蔵のような建物が老人の家だった。今にも風に吹かれて崩れそうな有様に、庄助はおっかなびっくり
家の柱をつついてみたりするが、流石にその程度でぐらついたりはしなかった。
「じいさん、なんでこんなにおんぼろなんだ。というか村の家みんなぼろぼろじゃあないか」
741:道祖神のお導き(お題:鏖)7/11[saga]
2013/10/13(日) 08:41:56.00 ID:t/0x6c1+o
「じいさん、おれあの釜で炭を作るところを見てみてえな」
「ちっと濡れた木ばっかでなあ、今しばらくは炭作らないんじゃ。ほれ、芋」
庄助と老人は薄暗い小屋の中で囲炉裏を挟んで向かい合っている。老人は鍋に箸を突っ込み、そのまま茹で上
がった芋を庄助に差し出す。庄助は手拭いでそれを受け取った。
「あちち・・・」
742:道祖神のお導き(お題:鏖)8/11[saga]
2013/10/13(日) 08:43:00.37 ID:t/0x6c1+o
「じゃあな、もう行くよ。芋、ありがとうな。じゃあな」
庄助はほとんど駆け足のようにして老人の家を出た。老人は大声で「また来い」とか「いつでも」とか言った
が、庄助はなんだかそれを聞いてはならないような気がして、聞いたら気持ちが揺るぎそうな気がして、聞こえな
い振りをした。
743:道祖神のお導き(お題:鏖)9/11[saga]
2013/10/13(日) 08:44:11.94 ID:t/0x6c1+o
「なんだ・・・これ・・・うっ」
異臭が鼻を突く。吐き気と頭痛を伴う不快感が肺腑から全身に広がっていく。脂汗が吹き出し、庄助は無意識に
後ずさり、釜から離れる。しかし、視線だけは釜の中に釘付けになったままだ。
そこにあったのは炭、ではなく、骨だった。一度だけ飢饉の時に見たことがある・・・人骨。火力が足らなかっ
たのか、肉らしきものが焦げ付いている。一人二人ではない、十、二十という大量の人骨が釜の中に収まってい
744:道祖神のお導き(お題:鏖)10/11[saga]
2013/10/13(日) 08:45:13.31 ID:t/0x6c1+o
「いや、平気だ。これ、芋、盗んで来たぞ・・・持つの手伝えよ」
「おっ、上手いことやったんじゃねえか」
「それより・・・お前今度襲う村のこと知ってるか? さっき見て来たんだが、どうも変でよ」
「村」と言いながら、庄助は親指で来た道を、道祖神の左側の道を指差した。
それを見て、清八が怪訝な顔をする。
745:道祖神のお導き(お題:鏖)11/11[saga]
2013/10/13(日) 08:46:11.95 ID:t/0x6c1+o
「清八、悪い、刀忘れて来ちまった。先に帰っててくれよ。ちょっと取ってくるわ」
庄助は言う。
清八はこれを訝しんで、何度も大丈夫か?と聞いたが、庄助は平気だ、と答えるだけだった。清八は結局、二個
持っていたうちの提灯の一つを残して、山道を戻っていった。
一人残った庄助は思う。これからやるはずだったことが、先にやられていたというだけのことだ。
746:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/10/13(日) 08:48:18.64 ID:t/0x6c1+o
転載終了
747:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2013/10/13(日) 09:43:57.57 ID:t/0x6c1+o
>>735-745
「何が言いたいのかよくわからない」という言葉が感想として浮かんだ。
背景のリアリティをがんばって構築したのではないかと思うけど、それよりも重要なものが欠けているような印象を受けた。
少なくとも自分にはこのお話が「面白い」とは思えなかった。
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