117: ◆tSiWM5GIyDZg[saga]
2013/07/14(日) 19:27:37.79 ID:EnRHzSex0
「あなたは元の世界へ戻る。けれど、そこで会うのは何も知らないわたし」
「そんなのは嫌だもの。だから、元の通りに世界を創り変えてやったのよ」
「同級生も、先生も、両親も死んだの。そんな世界なんて、いらないもの」
「あなたは元の世界に戻って、わたしはこの世界からあなたの世界へ行く」
「何も知らないわたしは、何もかもを知っているわたしに成り代わったの」
「あの日。あなたが願った日を起点に。タイムラグで、それは叶ったけど」
「言ったでしょう。自分勝手な事をするって。自己中も度が過ぎたかしら」
「そして、観測者の選定は先生を選んだ」
「お世話になったもの。恩返しをしないと。これからは幸せしかないもの」
「ずっと幸せが続くんだもの。幸せのメールを送り続けるだけの楽な仕事」
「先生に言ったら『お前を神を崇めてもいいぜ』なんて、褒められたのよ」
「以上で、ハッピーエンド。お分かり?」
ああ。彼女の言葉で、全てのパズルのピースが埋まった。
彼女の愛は重い。しかし僕には大歓迎の愛だと断言する。
彼女の唯一の嘘は「さようなら」だった、というわけか。
見事に騙された。少しだけ頭を抱えてしまいそうだった。
屋上での言葉は、文字通り同じ計画の事を指していたか。
「そう言えば。君は、最後の電話で『あ』とか、何か気付いてなかった?」
「ああ。あれ?演劇の台本を読んだだけよ。最初の電話で聞かなかった?」
「やりたかった台本を、一番にあなたに聞かせてあげられた。ハッピーよ」
まさかそんなところまで演技だったとは。迫真の演技という他にない。
彼女は、引越し中の車内から電話してきたわけか。ビデオを見ながら。
完全に忘れていた。というか、彼女の言葉は、全て真に受けていたが。
このメールは、本当に「幸せを運ぶ不幸のメール」だった、というわけだ。
思い出してみれば、先生の言葉と態度だったり、彼女のそれもおかしなものだ。
疑問に思ったが言葉にできなかったのは、嘘をつかずに嘘をついていたからだ。
言葉にするということは、難しいものだな。今になって、そう思い始めていた。
「さて。そろそろ、あなたからわたしへの、愛の告白の瞬間よ」
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