35: ◆tSiWM5GIyDZg[saga]
2013/07/14(日) 18:32:49.88 ID:EnRHzSex0
  
 「あなたは、嘘をついたこと、あるかしら?」 
  
 「あるよ。もちろん。胸張って言えないけど」 
  
 「わたしは、ないわよ。今のところの人生で」 
  
 それはすごい。しかし、彼女が言うからには、事実なのだろう。 
 今のところは、ということは、いずれ嘘をつくときが来るのか。 
  
 「じゃあ、君が嘘をつくときって、どんな時かな?」 
  
 「そうねえ。何か、もう大変なときでしょう。多分」 
  
 「今まで正直だったし、必ず騙されるわよ。ふふふ」 
  
 確かに。積み上げてきた信頼を崩してまで、嘘をつくとは考えない。 
 然るに、その嘘は恐らく受け入れられるのだろう。悪い笑みだった。 
  
 「ああ。そういえば、この学校に演劇部はあるのかしら」 
  
 「ううん。ええと、僕の記憶では、なかったかなと思う」 
  
 「そう。今さら、作れはしないわよねえ。どうしようか」 
  
 そういえば、彼女は演劇のビデオを見ているとも言っていた。 
 過去、彼女が演劇部だったという話も聞いていた。可哀想だ。 
  
 「僕でよかったら、協力するけど。どうする?」 
  
  
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