36: ◆wPpbvtoDhE
2013/08/25(日) 22:42:29.70 ID:CKIXIKcR0
久々に三人で会話をして以来、八重樫と木ノ下は店に来訪する機会が増えていた。
「今日は忙しそーだなぁ」
カウンターの端に二人は座り、いそいそと駆け回る一砂姿を時折目で追っていた。
「なんか凄いよね。高城くん」
八重樫の声は少しトーンが落ちている。自分に経験のないことをやっている一砂の姿が、どこか分け隔てを感じさせるものがあるからだ。
ただの学生である自分と、社会に混じり始めた彼なのだから仕方ないとはわかっているが、違いを感じさせられることに不満が生まれる。
「バイト……してみようかな」
「楽じゃねーぞ。って、兄貴が言ってたけどな」
八重樫の希望を一蹴するつもりではないが、木ノ下は兄の言葉を代行する。
「高城くんを見てたら、それくらいわかるよ」
尤もな意見だ。
八重樫は決して軽視しての発言ではなかった。しかと考えて、社会に身を置いてみたいと考え始めていた。
「えー、八重樫サンまでバイト始めたら俺一人じゃん」
「エミちゃんと来ればいいと思うけど」
「いや……アイツはほら、そーゆー仲じゃないし」
取り留めのない会話が続く、その時だった。カランとドアの鈴が鳴り、来客がまた数人増えた。
「いらっしゃませー」
一砂はカウンターの下からおしぼりを取り出し、お冷を盆に載せてテーブルへと向かう。
そのテーブルには三人の女子高生が腰をかけている。
「お兄さん若ーい。私達と同い年くらい?」
「はは、どうも。自分も高校生ですよ」
そのうちの一人が明るく声をかけるが、一砂は手馴れたように返事を返す。更に言えば満更でもなさそうだ。
だが、少し離れたカウンターでその様子を見る八重樫の表情は、一砂と真逆のものに変わる。
「……」
「アイツ、モテないわけじゃないもんな」
もはやフォローしようがないと割り切ったのか、木ノ下は無言の八重樫をちらりと見たのちに呟いた。
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