116: ◆m03zzdT6fs[saga]
2013/08/25(日) 06:04:51.37 ID:79dYTcmBo
「幼いころから私は、天才と呼ばれてきたわ。良家の子女として生を受けてから、ずっとよ」
彼女は、ぽつりと漏らすように、自身の過去を言葉にして、吐きだし始めた。
「両親は厳しかった。黒川家の娘として、恥にならないように、様々なことを教え込まれた。楽器もだし、勉強もだし、そして声楽もその一つよ」
声楽は、好きな物だったから良いけれどもね、と彼女は付け加えるように言う。私は、言葉をさしはさむ余地を見いだせなかった。
さまざまなことを教え込まれてきた千秋さんの過去が、いろいろなことに手を出してきた自分と、ほんの少しだけ重なるような気がしていたからだ。
もっとも、そんなことを面と向かって言うのは、彼女の過去に対する冒涜になるのだが……。
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