過去ログ - 妹と俺との些細な出来事
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776:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/11/03(日) 23:12:54.45 ID:HfBJyoWso

『女さんに言われた。どうせあたしに振られて落ち込んでいるはずのお兄ちゃんを慰めて
あげよとかって軽い気持で来たんでしょって。そしたらお兄ちゃんの部屋に彼女がいたん
でかっとなったんでしょ、自分は彼氏がいて兄を振ったくせに、その兄に彼女ができるこ
とが許せないんでしょ。どこまで身勝手なのよって」

『う〜ん』

 正直に言うと女さんの言うことの方が筋が通っていると思う。でもあたしはそれを妹ち
ゃんには言えなかった。

『あと女さんに言われた。どうせお兄ちゃんのところに来るなら、彼氏と別れて兄に告白
するくらいの覚悟で来いって』

『いやいや。それはおかしいでしょ。妹ちゃんが好きなのはうちの兄貴なのに』

 そのとき一瞬、お兄ちゃんが暗い表情で口にした言葉が脳裏をよぎった。あれはひどい
内容だった。自分の親友を待っているその辛い境遇を勧めるなんて、親友の行動としては
ありえないだろう。そう思ったけど、もう言葉は止まらなかった。口ごもった妹ちゃんに
あたしは畳み掛けるように言った。

『何とか言いなさいよ』

『しばらく妹友ちゃんのお兄さんとは会わないほうがいいのかも』

『ちょっと待ってよ。あんたら付き合ってるんでしょ。何でそんな女に言いがかりを付け
られたくらいでそういうことになるのよ』

『でも・・・・・・』

『でも、何よ』

『お兄ちゃんはあたしと彼氏のことを目撃して傷付いたと思うし』

『何でそこまで自分の実の兄貴に遠慮するわけ? ちゃんと断ったんでしょ。それで何も
問題ないじゃない』

『あたしさ、お兄ちゃんと前みたいに仲良くなりたい。恋人としては付き合えないけど、
それでも昔みたいに口げんかしたりからかいあったりしたい』

『それはわかるけど。でも何でうちの兄貴と会わないって話になるのよ。普通の兄貴は妹
の彼氏に嫉妬したりしないよ』

『それはそうだけど』

『妹ちゃんさ。まさかと思うけど、お兄ちゃんの部屋に女さんがいるのを見て嫉妬した
の』

『・・・・・・』

『だから女さんっていう人のことを、嫌な女だなんて言ったの?』

『・・・・・・違うよ』

『何であたしから目を逸らして答えるのよ。うちの兄貴のこと好きなんでしょ』

『多分』

『あんたねえ。あたしの兄貴をその気にしておいてそれはないでしょ。まさか、あんた。
お兄さんのことが本気で異性として気になりだしてるんじゃ』

『・・・・・・』

『何か言ってよ』

『わからない。ちょっとよく考えてみる』

『・・・・・・妹ちゃん』

 ママの不倫の事実はショックだった。自分の居場所である家庭が崩壊しようとしている
のだから。それでもそのときのあたしは、妹ちゃんがお兄さんにこれ以上接近することが
許せなかった。お兄ちゃんのためなのか。あたしのお兄さんへの恋のためなのか。それと
も。家庭が崩壊しそうなのは妹ちゃんとお兄さんの家族も一緒だ。二人に罪がないことも
あたしたち兄妹と同じなのだ。

 あたしは翌日、お兄さんに会いに行くことにした。住所は妹ちゃんが不審そうな様子す
ら見せずに教えてくれていた。もう、迷っている場合ではなかった。


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