過去ログ - 妹と俺との些細な出来事
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864:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/11/27(水) 22:26:30.26 ID:cHjlU9dDo

 でもどうも様子がおかしかった。宥めようとしたお兄ちゃんの腕を振り払った妹ちゃん
はスマホを取り出した。案の定すぐにお兄さんの携帯が鳴り出した。

「妹から電話が来てるんだけど」

「着信に気がつかなかったことにしましょう。これだけ人だらけで周囲もうるさいので説
得力もありますし。だから出ないでください」

「ああ」

 納得したようなお兄さんの態度に安心する暇もなく、一度切れた携帯はその後も断続的
に何回も鳴り響いた。これでは子どもと同じだ。パパとはぐれて迷子になった小さな子ど
もが必死になって親を探しているようだ。

「俺やっぱやめるわ」

 そのときお兄さんが鳴り止まない自分の携帯を真剣な表情で見つめながらぽつっと言っ
た。

「・・・・・・何でですか」

「妹を宥めてやらないと」

「それはもううちのお兄ちゃんの役目です」

兄「そうだけど・・・・・・そうだけど少なくとも今は違うんだよ。彼氏君じゃ無理だ」

「どういう意味ですか? 妹ちゃんは本当はお兄さんの方が好きだとでも言いたいんです
か」

「そうじゃねえよ。そういう問題じゃなくて、あいつには家族と一緒にいたい時があって、
そういうときに側に家族の誰かがいないとパニックみたいになることがあるんだよ。だか
ら今は彼氏君じゃ無理だ。俺の両親か俺自身じゃないと」

 がっかりした気持ちもあったのだけど、お兄さんの言葉はあたしを納得させてしまった。
というかその言葉をあたしは信じたかったのだろう。恋愛感情ではなく家族を求める妹ち
ゃんの行動にお兄さんは罪悪感を感じているのだと。それにあたしの方もパニックになっ
ているらしい妹ちゃんの様子に微妙な罪悪感を感じていたから、ここは素直にお兄さんの
言うことに従うことにした。

「全くブラコンとシスコン同士はたちが悪いです」

 お兄さんは黙ってしまった。

「わかりました」

「悪い」

「この埋め合わせはしてもらいますからね」

「おう」

「じゃあすぐに行きましょう。妹ちゃんを救いに」

 あたしはお兄さんに無理に笑顔を作って見せた。


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