911:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/12/07(土) 23:39:19.88 ID:aAj+iwHSo
<せめて妹のおまえのことだけは>
「思い知らされたよ」
やがてお兄ちゃんがはっきりとした声で言った。
「何を」
お兄さんへの想いを断ち切られたあたしはお兄ちゃんのことなど構っている余裕はなか
ったはずなのに。それでも思わずあたしは声を出して聞き返してしまった。
「おまえの言うとおりだ。多分僕は妹ちゃんのことなんか好きじゃなかったんだと思う
よ」
やはりそうなんだ。前から疑っていたこととはいえはっきりと口にされると結構ショッ
クを受けるものだ。
「お兄ちゃんの好きな人ってやっぱり」
「待て。それは違うぞ。兄妹だってどうかと思うのに、自分の母親のことがどうこうなん
て考えるわけないだろ」
「・・・・・・ママだなんて一言も言ってないじゃん」
「おまえは」
「もういいよ。どうせうちの家庭なんか壊れてるんだし。でもさ、お兄ちゃんには大好き
なママと暮らしたいって言う目標があるんでしょ? あたしはどうすればいいの。お兄さ
んと付き合うこともできず、家族も壊れちゃってさ」
「壊れてないよ。つうか、僕が壊させない」
「どうやって? もうお兄ちゃんの穴だらけの計画なんて考える価値すらないじゃん。そ
もそも妹ちゃんに相手にされてないんだから」
お兄ちゃんは俯いて黙ってしまった。
「・・・・・・・ごめん」
言い過ぎた。あたしはお兄ちゃんに謝った。
「あのさあ」
「・・・・・・何」
「僕は確かに考えが甘かったかもしれないけど、せめて妹のおまえのことだけは守るよ」
この人は何を言っているのだ。自分の母親に恋焦がれた挙句結果的に頭の悪い作戦を立
てて盛大に自爆しているくせに。この人はもうあたしが好きだった頃のお兄ちゃんではな
い。あたしはそう思った。あたしが口を開こうとしたとき、妹ちゃんからのメールを受信
した携帯が鳴った。
from:妹ちゃん
to:妹友ちゃん
sub:無題
『そろそろご飯食べに行くよ〜。今どこ? 出口で集合だから彼氏君と一緒にすぐに来て
ね』
これだけ無神経なメールも珍しい。あたしは無気力にそのメールに返信した。
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