過去ログ - 天井「どうしてここまで来たのだろうな」
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◆n7YWDDtkCQ
[saga]
2013/08/11(日) 16:50:11.75 ID:XOZAxrJC0
子供の頃は、家庭や教育機関の庇護があった。
もちろんこれらも一つの小社会だ、内部には矛盾も諍いもある。
それでも、家や学校という枠組みは、未成熟な子供を荒風から遠ざける隔壁だった。
都市の外で入った研究所には安定感があった。
自身に割り振られた領域での、責任は付いて回ったけれど。
組織の名を背負わされる代わり、構成員としてその恩恵を享受していた。
この場所で立ち上げた研究には充足があった。
野心と才能と需要を読む機転と、それらがあれば人は付いてくる。
自らの手で世界を切り拓くような、男を満たす成功の二文字が確かに見えていた。
転落し、必死に掴んだ手の中には金があった。
借金の労苦は裏返り、財産への信奉となっていく。
一度失敗したからこその保身は、数字として保障された安心を求めていた。
そして。
一瞬のうちに崩れ去る。
きっと、無邪気に安寧を信じていた幼児期でさえ、そこには裏付けなど無かった。
両親は離婚していたかもしれない。
研究所は倒産していたかもしれない。
主導していたプロジェクトは頓挫した。
次に身を寄せた計画も凍結された。
それでなくても、理不尽な思惑や圧倒的な暴力の前で、何が天井を守れるだろう。
どうすれば全ての危険を避けられただろう。
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