109: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2013/09/17(火) 22:47:44.87 ID:KwFoDQjV0
あたしは射撃体勢もそこそこに、照準すらたいして合わせず、あっさりと引き金を引いた。
振動と衝撃が手首から肩、肩から全身へ拡散する。大きく跳ね上がるあたしの右腕。炸裂音が鼓膜を震わせ、使い物にならなくなった。
銃弾は逸れていった。彩人は流石に銃を見て分が悪いと判断したのか、迷いなく後ろへ逃げ出す。
腕章「逃がさない。逃げらんないわ」
最早彩人はあたしにインプットされた。範囲内に彼女がいれば、あたしは絶対に見逃さない。追いかけっこの始まりだ。
駆けだそうとして何かに躓き、盛大に地面へ叩きつけられた。咄嗟についた手のひらが擦れてひりひりと痛む。苛立ちの募る、涙が滲むような痛みだ。
腕章「っく、なんなのよ、もう!」
見ればスニーカーの紐が解けていた。どうやらそれを踏んで転んだらしい。
あぁ、もう。腹が立つ。なんでこんなときに。
そこでようやくあたしは周囲がざわつき始めているのに気付いた。そりゃそうだ。車が家に突っ込んで、しかもあたしは猟銃をぶっ放しているのだから、どう考えたって穏便ではない。
近づこうとする者さえ皆無だけれど、それでも野次馬根性だけは一流で、遠くから携帯のカメラでぱしゃぱしゃやっているのが何人もいる。これはまずい。顔を映されるわけにはいかない。
そのうちに遠くからパトカーのサイレンが聞こえてきた。くそ、誰か通報したな。当然か。
けどここで捕まるのはまずい。無根拠にあの宇宙人がなんとかしてくれると信じられるほど、あたしはあの宇宙人を信頼しちゃいない。
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