112: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2013/09/17(火) 22:50:31.78 ID:KwFoDQjV0
正門は論外。いや、もしかしたら案外出られるのかもしれないけど、敵がいるであろう屋敷に背を向けることが恐ろしすぎる。最後の手段にしかならない。
壁は壊せないことが分かったし、ならば裏口でも探すか?
壁に背を向け、どこからでも襲撃が来てもいいように心構えをしつつ、あたしはじりじりと裏口や勝手口、壊れた穴がないか探す。結果は何もなかった。ひたすらに漆喰塗の塀が続いているだけだった。
違和感を覚えるレベルの殺風景さに、あたしは内心で訝っていた。どこまでが能力なのだろうか。それとも、全てあたしの勘違いだったとでも。
思考が二転三転し、あっちへふらふらこっちへふらふら、まとまりがない。
と、歩いているうちに、屋敷の玄関が見えてきた。元の場所へと戻ってきてしまったのだ。
何もないことがわかったことは収穫だったが、それは殆ど徒労と同意義。
仕方がない、最後の手段を取ろうかと、視線で門を見やって、あたしは唇を噛み締めた。
門扉が消えている。
漆喰に塗られた塀が続いていた。
よく見れば先ほどあたしが銃弾を撃ち込んだ箇所も、いつの間にかすっかりと直っている。自己修復能力を備えた、まるでこの敷地全てが生き物であるかのようだ。さながらあたしは胃袋に落ち込んできた食料と言ったところか。
冗談じゃない。
ぎぃ、と音がした。屋敷の玄関、その扉がひとりでに開いたのだった。
腕章「……入ってきなさい、ってことね」
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