過去ログ - 後輩「わたしは、待ってるんですからね」
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376:以下、新鯖からお送りいたします[saga]
2013/09/14(土) 19:22:42.23 ID:Dg8mkFd4o

 どうして俺はこんなことしか覚えていないんだろう。
 もっと他に覚えているべきことはあったはずなのだ。

 古い記憶を漁ってみる。でも思い出せることはろくになかった。
 幼稚園に入っていた頃のことなんておぼろげな記憶すらない。
 
 一番古い記憶はなんだろう? 小学校低学年くらいのとき、従妹が叔母たちと一緒に家に遊びに来たときだろうか?
 それとももっと別のものだろうか。

 ようやく思い出せたのは、また死んだ動物についての記憶だった。
 雀の死骸だ。小学校の頃だ。学校が終わった後、校庭の隅に年下の子が何人か集まっていたから、何かと思って近付いた。 
 そうしたら、木の枯れ枝でスズメの死骸をつついていた。俺は無性に腹が立って怒鳴りつけた。

 そうすると、彼らは、墓を作ろうとしたのだ、と弁解した。実際、傍には浅い穴が掘ってあった。
 細い枝で体を押してそこに入れようとしていたのだ。

 触って持てばいいだろ、と俺が言うと、気持ち悪いんだ、と彼らは言った。
 俺はその倒錯に何を言っていいのか分からなくなってしまった。
 何かしら耐えきれないような気持ちだけが残った。

 俺は何も言わずに穴を深く掘り、素手で死骸を掴んだ。柔らかくてぐにゅぐにゅとした、気持ち悪い感触だった。鳥肌が出た。
 それでも穴の中に動かなくなったスズメの死骸を置き、わずかに土を掛けた。そこが限界だった。

 埋めろ、と俺は言った。ありがとう、と彼らは言った。そして木の棒を盛り上がった土に差したり、その前に形のいい小石を並べたりし始めた。 
 俺はもう何も言いたくなかった。いくら手を洗っても、死骸の感触は消えなかった。



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