過去ログ - 後輩「わたしは、待ってるんですからね」
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2013/09/18(水) 19:09:52.24 ID:HkmCtYrLo
「うん。知ってるよ。おにいちゃんはそこから出られないんだ」
唐突に、声の調子が変わった。それでも俺は、相手が誰なのか分からなかった。
以下略
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2013/09/18(水) 19:10:20.01 ID:HkmCtYrLo
「黙れよ!」と俺は怒鳴った。
けれど、声は何かに吸い込まれたように一瞬で消えてしまった。
最初から存在しなかったみたいに綺麗に。
以下略
425
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2013/09/18(水) 19:11:07.05 ID:HkmCtYrLo
声はそこで一度途切れた。自分の身に何が起こっているのか、把握できない。
窓の外の景色は、霧に塗りつぶされていた。ここからはもう、何も見えない。
「……俺のせいだろ、母さんが出て行ったのは」
以下略
426
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2013/09/18(水) 19:12:01.53 ID:HkmCtYrLo
「違う」と俺は言った。でも、何が違うのかは、自分でも分からなかった。
「理不尽なことっていうのは、誰の身にも起こりうる。それが“偶然”きみに降りかかったってだけ。
そんなの、耐えられないよね。“偶然”自分だけがこんな目に遭うなんて、そんなの、苦しいよね」
以下略
427
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2013/09/18(水) 19:13:50.66 ID:HkmCtYrLo
「なあ、おまえはいつまでそこにいるつもりなんだ?」
まだ、声は止まなかった。俺は耳を塞いでそれを遮ろうとする。
でもダメだった。どれだけ強く抑えても無駄だ。声はとても深く入り込んでくる。
以下略
428
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2013/09/18(水) 19:14:22.66 ID:HkmCtYrLo
「でも、人と関わらないのも怖かったんじゃない?」
「……」
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429
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2013/09/18(水) 19:15:23.84 ID:HkmCtYrLo
扉の向こうから楽しそうな笑い声が聞こえた。誰かと誰かの話し声が聞こえた。
誰も俺のことなんて気に掛けていない。人々にとって俺はどうでもいい、取るに足らない存在なのだ。
「……俺に、どうしろって言うんだよ。扉は開かないんだ。押したって引いたって開かないんだ。
以下略
430
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2013/09/18(水) 19:16:12.35 ID:HkmCtYrLo
「気持ちはわかるよ。決心して外に出たからって、何も手に入れられないんじゃ、意味ないもんね」
「……手に入れたって同じだよ。俺が扉を開ける。誰かが入ってくる。そしてやがては去っていく。
何度も繰り返すんだ。扉の閉まる音だけがずっと繰り返される。何も変わらないんだ。
以下略
431
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2013/09/18(水) 19:17:22.87 ID:HkmCtYrLo
「もう扉を開けても手遅れだよ。誰もあんたのことなんて待ってない。この扉はもうどこにも繋がっていない。
その部屋には時計がないから、分からないかもしれないけど……わたしはずいぶん長い時間、ここで待ってたんだ」
「待ってくれ、違う……」
以下略
432
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2013/09/18(水) 19:17:51.23 ID:HkmCtYrLo
「なあ、待ってくれよ」
俺はそう声をあげた。いつもよりずっと震えていた。
ドアノブを握って、扉を押そうとしてみる。でもできなかった。腕が震えて、力が入らない。
以下略
433
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2013/09/18(水) 19:18:27.30 ID:HkmCtYrLo
「……誰だ? いや、誰でもいい。扉を、開けてくれないか。こっちからじゃ、開かないんだよ」
俺の言葉に、誰かの声は答えた。
以下略
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