過去ログ - 後輩「わたしは、待ってるんですからね」
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495:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/09/24(火) 18:58:20.39 ID:1PtdhOx8o

 屋上には、案の定誰もいなかった。
 真上に灰色の空が覆いかぶさっている。雨が降り出しそうな気配があった。
 
 俺は屋上の中央に立って、辺りの様子を見回してみた。
 天気のせいだろうか? 物音らしい物音はほとんど聞こえなかった。
 学校の敷地内からも、その外からも。まだ朝の早い時間だとはいえ、ちょっと静かすぎた。
 
 耳鳴りがしそうなほどの静寂。その中では、微かな音がとても大きく聞こえる。
 ふと誰かの声が聞こえた。一瞬、声の主がどこにいるのか分からなかったが、屋上に誰かが来たわけではなかった。

 俺はフェンスに近付いてそこから下の様子をうかがった。登校してきた生徒たちが、言葉を交わしているのだ。

 聞こえたのはそれだけだった。
 扉を開く音は聞こえなかった。彼女はもう、この場所には来ないのかもしれない。

(会いたいのか?)と俺は俺に訊ねた。
 どうなんだろう。自分でもよく分からない。

 彼女と話す時間は好きだった。彼女と話すときだけは、俺は無意味に緊張せず、安らぐことができた。

 でもそれは知らなかったからだ。知ってしまった今となっては、もう以前のような感覚になることはないだろう。
 それに、会って何を話すというんだろう。俺が言えることなんてもう何もない。

 何をどうしたって、いつかはこういう結果になっていたのだと思う。
 あるいは、何か、もっと別の方法があったのかもしれない。でも、それはもう手遅れだった。
 俺は時間を無為に浪費しすぎたのだ。



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