過去ログ - 日下部若葉「若葉おねえさんにお任せなの」
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[saga]
2013/08/24(土) 21:08:34.77 ID:jwS6se1E0
「彼はいろんな仕事の手伝いに駆り出されていた……懐かしいわね。人員が整ってなかったころは、私もセルフプロデュースみたいなこともしていて……坊やがそれを、手伝ってくれたこともあった……」
空になったグラスを、礼子さんがテーブル端に避ける。中の氷がからん、と音を立てて崩れた。
私は黙ったままワインの瓶を手に取る。彼女は「ありがと」といって新しくワイングラスを持ち、私のお酌を受け入れた。
「それで……若葉、貴方が聞きたいのは、彼の勤労中のエピソード? 中学卒業後、すぐに働き始めた理由? それとも……」
礼子さんは、妖艶の文字を体現するかのような流し眼で私を見据えながら、驚愕の言葉を言い放った。
「私か……あるいは美優が、坊やと男女の関係になったことがあるかってこと?」
「え……ぅ……!?」
思わぬ、発言……私が絶句して固まっていると、不意に礼子さんの顔に優しい笑みが浮かんだ。
「……やっぱりね。好きなのでしょう? 坊やのことが。……気付いてた? この仕事が終わった後……あの女豹の衣装で坊やをからかってた時……美優が、坊やに虎衣装姿を見られて恥ずかしがっていた時。貴方、結構怖い顔してたわよ?」
「…………」
「ああ……ちなみに男女の関係云々に関しては、私も美優もノー、よ。安心して?」
「…………よく……わからないんです……」
やっと、口を開くことが出来た。
彼の事が好きなのだろう、と言われた事への動揺。自分でも気付かなかった表情を指摘された困惑。……礼子さんの、彼との男女関係の答えを聞いた時の安堵。
いろんな感情が混ざりながら……絞り出すように、私は言葉を発していた。
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