30:一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo.[saga]
2013/09/11(水) 00:42:58.43 ID:29LAOzZko
「王子君が言ってた……。レベルを上げて物理で殴るのが最強って。うん、王子君はいつも正しい。そして手数こそ正義って……」
うっとりとしながら勇者は独白する。動きを止めた魔王を見てやや狼狽する。
「ああ、いけないいけない。トドメは王子君に貰った伝家の宝剣じゃないとなー。うん、王子君が呉れたこの剣がなかったら魔王には勝てなかったなー、やばかったなー。ほんとこの剣がなかったらやばかったなー」
無造作に背負っていた剣を抜き、ざくざくと魔王の身体を串刺しにする。
「む……見事だ、勇者よ。まさかに、な。単身で魔王たる我を誅するとは、空前絶後であろうよ」
「そう?私は正直拍子抜けだけどね」
「そうか、そうか」
その無邪気な勇者の言に魔王は哂う。嗤う。笑う。
「勇者よ。貴様に祝いをくれてやろう。呪いをくれてやろう。魔王たるこの身を討ち果たした勇者よ。
貴様は最早な、人としては生きられぬよ。
人という種を根絶やしにするだけの力が我にはあった。そしてその我を単身で討ち取る貴様。それは果たして人に受け入れられるものかな……?いや、無理だと断言しよう。
貴様は貴様が守った人類の手によって殺されるのだ。排除されるのだ!
その生存すら危うかった人という種。守ったそれから排除されるというのはどんな気持ちかな?」
ククク、と魔王は哂う。
勇者は応える。
「ばっかじゃないの?別に君を殺したのは王子君に頼まれたからだし。人という種とかそんなのどうでもいいし。
まあ、とりあえず大人しく死ね。私のために。王子君のために死ね。死ね」
ざく、ざくと立て続けに剣を突き立てる。
「クハハ、滑稽だな。貴様の死にざまが浮かぶわ!貴様は戦場では無敵だろうよ。そしてその無敵故に同族たるヒトから排除されるだろうよ!なんとも愉快なことだろうか!」
「うるさいなあ……」
埒が明かぬとばかりに勇者は剣を振るう。
そしてついに魔王はその活動を停止する。その様子を見た勇者は念のためにゴリゴリとその身体をなます切りにしてみて、反応がないのを確認する。
「よし!魔王、討ち取ったりー」
晴れやかに勇者は宣言する。高らかに。
「王子君……やったよ……。やり遂げたよ……。王子君……」
満面の笑みで勇者は勝利宣言を。
魔王の呪いの言葉なぞどこ吹く風。喜色満面で勇者は帰路につくのであった。
そして、この日。人類は間違いなく救われたのである。
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