過去ログ - 削板「一緒に暮らさないか、百合子。」
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◆owZqfINQN1ia
[sage saga]
2013/09/13(金) 22:38:29.43 ID:ZglM4QS1o
よくよく問い詰めたところ、そもそも去年の夏の終わりに脳を損傷するまでは常時能力使用状態にあって女性ホルモンが機能していなかったらしく、胸も所謂つるぺた状態であったらしい。だからブラジャーを身に着ける必要が発生したのは去年の秋頃の話であったのだけれど、その頃出会った女性の知り合いがそんな出で立ちをしていたものだから、自分もこれでいいのかと納得したということだ。
(っていうか、名前伏せてても誰だか分かるわ、その「知り合い」…)
とは思っても口にはしない。どこぞの霧が丘のブレザーを羽織っただけのサラシ女の影が脳裏を過ったが。
「アンタ、仮にも女なんだから、もうちょっとどうにか……、」
まさか自分が誰かに『女らしくしろ』だとかいう台詞を吐くだなんて思っていなかった御坂は、たかだか数分の遣り取りで大層疲労していた。常盤台で生活していて大分麻痺していたが、自分より女らしくない女というのも確かにいるらしい。この通り、目の前に。
「制服のスカートの下に短パン穿いてあっちこっち飛び回ってる奴に言われたかねェ。」
「私だって晒巻いてる奴に言われたくないわよ。」
「アンタ、素材は悪くないんだから。別にピンク着ろだの、レース巻けだの言わないけど。」
呆れながらそれでも御坂は手近にあったブランケットを彼女の体に巻きつけた。何せこの部屋も、カーテンが開けっ放しの状態であったから。
「皆面白いこと言うのなァ、」
「皆?」
「黄泉川、上条、浜面、滝壺に原子崩しもかァ?オマエら全員目が腐ってるわけ?俺が綺麗だとか、美人だとか。」
彼女は酷く楽しそうに、邪気もなくけらけらと笑った。その顔がまた酷く美しかったので、御坂はその場で泣き出してしまいたくなった。結局この女は、未だに自分の中に実験動物としての価値以外のものを見出していないのだと分かってしまったから。
女としての仕合わせも、歓びも、或いは哀しみすらも知らないのだ。惚れた男に『女』として褒められる、その冥加すら。幾らか年下の自分ですら、朧気に理解しているのに。
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