過去ログ - 栗原ネネ「ブレイブルー」
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12: ◆delkBMjP.Ce4[saga sage]
2013/08/31(土) 23:38:53.85 ID:xp1O2wjRo

目の前では会話をしているのに、時計の音がコチコチとうるさい
あれから集中して目の前のオーディションを眺めていたが
結局、今までと変わらず動く事は出来なかった

かわるがわる来る女の子の話を聞き、そのまま去っていく背中を見つめる
難しい顔をしてごまかしているが手を上げるタイミングはわからない
徐々に終わりが近づいてくるオーディションに焦りを感じてくる

(どうする? 誰でも良いからとりあえず合格にしておくか……?)

ハッキリとしない視界で、手元にある履歴書に目を通すけど
思考は焼けついてしまい、同じ考えを何度となく繰り返し
身体は氷のように固まったままだ

「どうかしましたか?」

ふと、進行役の爺さんに話しかけられる
気が付けばオーディションは中断されており、手元に置かれた水を飲んでいる
動揺しているオレを気遣ったのか、いつの間にか休憩時間をとってくれたようだ

「いえ、どの子が良いか決めかねてます……」

「はぁ、そう言う事ですか……」

「正直、誰が良いかわかんないっす……」

こんな情けない声を漏らしては、何も考えて無かったのがバレてしまっただろう
しかしもう隠しても仕方ない、自分の気持ちを名前も覚えていない爺さんに話す
爺さんはそんなオレを諭すように「まぁ、よくある事ですよ」と笑っていた

「……それなら、友達になれそうな子を見つける事ですね」

「友達……?」

今まで思いつきもしなかった意外なアドバイスに思わず聞き返す
よく分かってないオレの事を微笑ましく見守るように
「それくらい気楽にいけって事ですよ」と付け加えて説明してくれた

その言葉を聞いたオレは、今までの自分の勘違いを悔いた
落ち着きを取り戻すために手元にあった水を飲み干し頭の中を整理する

今まで顔や声なんかを重点的に見てきたが
そもそもアイドルってどういうもんだ?
可愛くて、歌が上手くて、ステージの上で輝いていて……

でもそれはテレビなんかで見ているイメージでしかない
つまるところ結果であって、そこまで持って行くのがオレの仕事だ

(なら新人のオレでも育てやすい、大人しい子か……?)

(その子をどんなアイドルにする……?)

(オレの相棒にはどんな子が良い……?)

静寂の中、パズルのように理想のアイドル像を組み立てていく
オレは少しづつ見え始めていた光に、全神経を集中させていた



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