2: ◆delkBMjP.Ce4[saga sage]
2013/08/31(土) 23:20:25.44 ID:xp1O2wjRo
赤い夕焼けに照らされて、光る水平線が目の前に広がる
お気に入りのミュールを手に持ち、私は一人足を波にさらしていた
日は落ちたけど、それでもここは南国だと意識させる暑さが身を包む
泳ぐにはもう遅いのかな? 他に人影は見えなかった
私の地元の群馬には海がない
本来、内陸育ちの私には一面に広がる海なんか縁のない場所だ
そんな私は、海に対する一種の憧れみたいなものがあったんだと思う
何気なく綺麗な海が見てみたいと言った、小さなお願いをあの人は叶えてくれた
「これで、もう終わりなのかな……」
その呟きは誰の耳にも届かない
焼けるような日差しも、胸一杯に広がる潮の匂いも
今は全て夢をみていたかのように思える
「…………」
感傷的な気持ちを振り払うように、頭を振り気持ちを入れ替える
これが夢だったら、この時間を全部否定する事になる
それだけは絶対にしたくなかった
(大丈夫……夢じゃないんだから)
自分に言い聞かせるように、真っ直ぐと前を見据える
ここに来てからは何度かこうして海を眺めていた
あの人は「そんなに嬉しいもんか?」と、呆れた顔をしていたけど
咎める事はせずにそばにいてくれた
「あっ、そう言えば……」
さっきから何度も、私の頭の中に現れては今はそばにいない
我儘は言わないって決めていたけど、やはり一緒に居ないと少し寂しい感じがする
どこにいるんだろう?
少し用事があるって言ってたけど何かしに行ってるのかな?
「おーい」
ふと、そんな考えを見透かしたかのように、遠くから声が聞こえる
高鳴る気持ちを気づかれないように、そっと胸に手を当てて気持ちを落ち着け
クルリと身体を翻させて、声の元に振り向くと私の名を呼びながら小さく手を振っていた
「はい、今行きますね!」
裸足のまま私を呼ぶ声のする方へ駆けだす
今どんな顔をしているんだろう?
答えてくれるかな……?
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