5:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/09/01(日) 07:40:44.39 ID:InD/KiKc0
  
 仕方がないと来た道を戻ろうとした時、どこからか芳しい匂いが風に運ばれてきた。 
 少し酸味がかった匂いだ。色んな物が溶け合い濃縮されたように複雑でもある。 
 これは……デミグラスソースの匂いかしら。 
  
  
 「……あそこからかしら」 
  
  
 私は匂いが漂ってくる元を見つけた。 
 黒ずんだ緑のテント看板に、蔦で覆われた白い壁。 
 とても年季の入った店のようだ。 
  
  
 「あら、カフェと書いてあるけれど……」 
  
  
 看板にはカフェと書かれていた。 
 そしてガラスが張られたディスプレイには、サンドイッチなどコーヒーのお供程度の品しか陳列されていない。 
 しかし、確かにここからあの匂いがしてくる。空腹の私を誘うようなあの芳しい匂いが。 
  
 いつまでもここに立って物色するよりも入って確かめた方が早い。 
 私はそう思い、その店のドアを開けた。 
  
  
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