過去ログ - 【とあるSS】壊れた窒素と、打ち砕く幻想
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3:K[saga]
2013/09/03(火) 12:15:51.68 ID:sBV5PyAU0
 光沢ある滑り気は、どうやら彼女の全身を包んでいるようだ。
 黒夜は自身の腕を鼻に近付け、試しに臭いを嗅いだみた。
 が、一瞬で表情を歪めた。
 それはかなりの異臭を放っており、離れた場所に立っている絹旗ですら顔をしかめる程であった。

絹旗「んっ……」

 立ち尽くす二人に、風が吹いた。
 絹旗はフードを押さえ、片目を閉じた。

黒夜「うわっ、色変わってるじゃん。私の服、黒だぞ?」

 瓦礫の隙間から顔を覗かせる火が、風によって勢いを増し、明るさを増す。
 それに照らされた黒夜の服は、赤黒く染まっていた。
 それは、血。
 一人ではない。
 何十人という数。
 それらが全て混ざり合い、黒夜を染め上げているのだ。

絹旗「まあ、奴等に人と同じ血が流れているなんて超ありえませんからね」

黒夜「はははっ、違いねえ! そりゃ、黒も染められちまうわなっ」

 黒夜の笑い声が周囲に拡散していった。

絹旗「さて……私は行くとします」

黒夜「なんだー? どっかアテでもあんのかよ」

絹旗「とりあえず、お金は超稼がせてもらったんで、しばらくは身を潜めますよ」

 絹旗はそう言って、パーカーのポケットから数枚のカードを取り出した。

黒夜「ちゃっかりしてんなー、おい」

絹旗「よければ一枚あげますよ?」

 手にした数枚のカードから適当に一枚抜き取り、絹旗は黒夜に投げた。
 カードは空気を裂きながら回転し、黒夜の眼前へと迫る。
 黒夜はその飛んできたカードを人差し指と中指で器用に挟む。

黒夜「おいおい、暗証番号が無けりゃ使えねえだろうが」

 カードを弄びながら、黒夜は絹旗に言葉を投げた。

絹旗「それは大丈夫ですよ。裏面に超書いておきました」

黒夜「あん?」

 訝しげに黒夜はカードを裏返した。
 そこには数桁の数字が黒のマジックで書かれていた。 

絹旗「聞き出すのに、超苦労したんですからね? 黒夜程ではないにしろ、私も一般人を潰すなんて数秒と掛かりませんから」

黒夜「あー……確かに私じゃ無理だな。聞きだす前に潰すのがオチだぜ」

絹旗「ええ、食材は小さい程、扱いが超難しいですからね」

 絹旗の言葉に、黒夜はカードから視線を上げた。

黒夜「尋問……いや、SMプレイとか、絹旗ちゃんには向いているんじゃねえか? くはははっ」

絹旗「私としては、黒夜の方が超向いていると思うんですがね」

 そう言って、絹旗は瓦礫の上を歩き出した。
 黒夜に背を向けて。

絹旗「――また、超会いましょう」

 離れた言葉は風に乗り、黒夜の耳へと届いた。
 その言葉に、黒夜は笑った。

黒夜「ああ。その時は、新しい時代を築こうじゃねえか」

 風を受ける黒夜の言葉は、絹旗には届かない。

黒夜「――『新入生』としてよ」

 揺られた炎に照らされた顔は笑っていた。




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