過去ログ - 貴音「こひのとらはれ」
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15:以下、新鯖からお送りいたします[sage]
2013/09/04(水) 18:49:57.83 ID:bKqi92pu0
スタジオ内に戻ってみると、撮影はつつがなく進行していた。
一応現場をこっそりと抜け出していた身であるので
やはりこっそりと戻ってみたのだが、案の定誰もそんなことに気付きもしない。
でも貴音だけは気付いてくれたようで、俺に手を振ってくれた。
すごく嬉しいんだけれども、今は収録に集中してなきゃだめだよ。

ディレクターさんは俺がいつも貴音に付きっきりであると述べていたが、
業務契約書にはそうしなければいけないという条項は存在しない。
読んだ覚えがないからわからないけど、多分存在しない。
結局のところ俺が貴音に付きっきりなのはただ俺がそうしたいからであり、
さっきのあれは労働基準法第34条に定められた休憩をとっていただけで厳密にはサボリではない。

だがディレクターさんの場合ははっきりとサボリである。
今もせっせと指示を出しており、とても余裕がある仕事には見えないのだが、
さっきはいったいどんな手練手管を使ってこの現場を抜け出したのだろうか。

実際問題、今貴音の収録している番組は日本中からかき集めてきた芸能人が自分のエピソードを語り、
それを司会である中堅芸人のツッコミのほうがツッコンで、ボケのほうが便乗してボケるという
まあ世間からいい加減うんざりされているタイプのトークバラエティであり、
俺が立ち会ったところで大してやることはない。
だただひたすら貴音の活躍する姿を遠巻きに愛でるのが主だった仕事である。

かわいい。

撮影終了後ディレクターさんのところへ赴いたところ、挨拶もそこそこに追い払われてしまった。

「早くあの子のとこ行ってやんなさい」

だそうである。
俺もそうしたいと考えていたので素直に従う。

だがもともと、俺たちは別に喧嘩をしているというわけじゃない。
ただ俺が一方的に謝り、貴音がそれをあしらい続けると言う観客不在のコントが上演されているだけだ。

だがしかし、もうあの件に関しては言及をやめることにする。
もしかしたらあの件について話をすることこそが貴音を苦しめてしまうのかもしれない。
悲しい目をしながら「怒っていない」と言われるのも、結構きついのである。
確かなのは、俺が酔いに任せて貴音を組み敷こうとしたということと貴音はそれを怒っていないということ。
良いとか悪いとかでなくて、その事実がただ存在すると言うだけなのだ。
そう考えることにした。


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