過去ログ - 【モバマス】「幸子、俺はお前のプロデューサーじゃなくなる」
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以下、新鯖からお送りいたします
[saga]
2013/09/04(水) 22:00:51.76 ID:DVgSD76f0
「面白そうな話をしてますね。ボクに続きを聞かせてもらえますか?」
一瞬の静寂が訪れる。
戸惑うような空気がトイレに満ちていく。
「いえ、何でも……すみません、失礼します。ほら、行くよ」
数人の足音が遠ざかっていく。
私は息を殺して、自分がここにいると悟られないようにする。
私に気づかないまま、出て行って欲しいですけど……。
どん、と音がして、私が入った個室のドアに、その子が背中を預けたと分かる。
「……あ、もしもし、プロデューサーさんですか。カワイイボクのためにお時間もらえますか?」
誰だか知りませんけど、トイレで電話なんて非常識だと思う。
それに、盗み聞きしてるみたいで、いい気分もしない。
「ええ、実は今ですね、陰口を言ってる子たちの姿を見ちゃったんです。ああ、知らない人たちです。いえ、ボクに対してでもないですよ。じゃあそれがどうしたって、プロデューサーさん、察しが悪いですね。ボクの担当になった自覚が足りてないんじゃないですか? いいですか、ボクは陰口というものが大嫌いなんです」
堂々として、ずけずけとものを言うこの感じ、私が苦手とするタイプだった。
「何故って、ボク自身が学校で陰口を散々に叩かれてきたからです。愛想がなくて暗いって。……いや、ボクの話ですってば。まあ、信じないならいいですよ。どうせボクは、悩みひとつないお気楽な人生を送ってきた女ですからね! ふん、いまさら取り繕ったって遅いです。……え? あ、そうですか……ではケーキ二つで手を打ちましょう。し、仕方なくですからね。ああ、なんて優しいボク!」
私も、学校ではこそこそと裏で文句を言われてたっけ。
そのたびに心臓がきゅってなって、お前は教室から要らない子だって、耳元で囁かれてる気がしてた。
よく、別棟のトイレにこもって、ひとりで泣いてたっけ……。
「これはボクだけじゃないと思うんですけど、自分の陰口を耳にしてしまうと、周りの全てから邪魔者扱いされてる気がしてくるんです。楽しそうな笑い声が聞こえるたびに、ここはお前の居場所じゃない、出て行けって言われてるみたいでした。いたたまれなくなって、トイレの個室でよく泣いてたんです。……言い返さないのかって? 意味ないですよ。嫌いな相手から、やめろって言われたって、やめるわけないでしょう?」
そうだ。陰口を言うのは、決まってずるい子たちだから、安全なところから石を投げてくる。
こっちから石を投げ返したって、届かないところに逃げてしまうだけ。
目障りな私がそこにいる限り、その子たちはずっと石を投げてくるんだ……。
「どうしようもないから、諦めるのかって? はッ、何を寝ぼけたことを言ってるんですか?」
熱っぽく、声を張り上げて。
「そういう時は、薄っぺらな言葉じゃない、何かを見せつけて、黙らせてやればいいんですよ!」
私が苦手とする子たちと同じだ、という評価は撤回だ。
この子は、凄い。
「世界で一番カワイイボクに何かご用ですか、ってね!」
だけど、私には無理だ。
この子は、最初から、持っていたんだろう。
アイドルになる、才能みたいなものを。
私にはそれがない。
だから、頑張ったって、この子みたいにはなれないし。
この子みたいには、頑張れない。
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