過去ログ - 【モバマス】「幸子、俺はお前のプロデューサーじゃなくなる」
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以下、新鯖からお送りいたします
[saga]
2013/09/04(水) 22:06:31.60 ID:DVgSD76f0
その日、私は、着替えもしないまま。泣き腫らした目のまま。
再び、プロデューサーの車で、アウトレットモールに引き返す。
ライブイベントの公演なんて、もう何時間も前に終わっていた。
辺りはすっかり暗くなり、アウトレットモール自体の営業時間がもう近い。
私は、お客さんも、お仕事も、放り出してしまった。
もう、アイドルとしてステージに立つことはないだろう。
それでも……私は、最後に、自分が立ったステージを見てみたかった。
人がいなくなった広場は大きく、ステージから見る景色は格別だった。
もし、ここにひとりで立つことができたなら、どれだけ喜ばしいことだろう。
「アイドルを続けられなくなってから……こんな気持ちになるなんて」
プロデューサーに優しく肩を叩かれた。
それが感情の堤防を決壊させたみたい。
私は鼻をすすり上げ、涙を流す。
「私……アイドルを続けたかった……もっと……もっと……」
その時、涙でかすんだ視界に、鮮やかな赤色が滲んだ。
今度は、別の場所で、青、黄色、と。
生じた光が、左右に、ゆらゆらと振られ始める。
「え……?」
袖で涙を拭う。
見ると、公演がとっくに終わった広場に、数人、男の人が残っていた。
「乃々ーッ!」
夕闇を引き裂くような、野太く、力強い声が、私を呼ぶ。
「俺はお前に惚れたぞ!」
声が。
「今時、君みたいなアイドルはいやしない!」
声が。
「貴方の姿は綺麗だった!」
声が。
「俺はお前のファンになったぞ!」
声が。
私の心の、奥深いところに、突き刺さっていく。
ふっと、広場の奥の暗がりから、小さな影が歩み出てくる。
「やれやれ、なんだかしゃくですけど、世界一慈悲深いボクが、乃々に主役の座を譲ってあげましょう」
軽やかに歩み寄ってきた幸子ちゃんが、私にワイヤレスマイクを手渡してくれる。
「ありがとう……幸子ちゃん」
「お礼は、乃々が帰ってくるのを何時間も待ち続けた、あの人たちに言うんですね」
「うん……」
幸子ちゃんは、ここにいるのは無粋だって感じで、私に背を向けて去っていく。
私は、マイクを握り締めて、
ありったけの思いを込めて、
アウトレットモールが閉まるまでの、ほんのわずかな時間。
私だけのステージの幕を上げたのだった。
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