過去ログ - ジオン女性士官「また、生きて会いましょう」学徒兵「ええ、必ず」
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14: ◆tK49UmHkqg[sage]
2013/09/15(日) 02:37:51.33 ID:rUu3+dw5o

「あちょー!」

ふざけているのか本気なのか、キリはそんなことを叫びながらオスカーの脇腹に蹴りを入れ、ひるんだその隙にカイルから引き離してもう2発、鋭く腹と胸を蹴り上げて床に吹き飛ばした。一瞬、何が起こったのか理解できていなかったカイルの方を向き直ったキリは、腰を落とした体勢から全身のバネを使って低い体勢のまま、カイルの腹に拳を突き出した。キリの拳がカイルの腹にめり込んで、カイルは崩れるようにその場に倒れ込んだ。

 「うぉ!キリが勝ったぞ!」

「おい、待てよ、女同士だぞ?キリが告白するのかよ?」

「バカ、お前、男がするよりもこっちのが興奮すんだろ!」

「意味分かんねえよ、バカ!おい、キリひっこめ!」

「黙れ!外野ども!」

キリは周囲の野次にそう言い放ってウリエラを指差した。それから大声でのたまった。

「ウリエラ、好きだ!あたしと付き合ってくれ!」

「ごめん!キリ!私そう言う趣味はない!」

間髪入れずに答えたウリエラの返事が、あたりに一瞬の沈黙を呼ぶ。次の瞬間、キリは顔を覆って

「うわーん」

と、芝居がかった口調で叫びながら、食堂を走って出て行った。

食堂のメンツはあまりの急展開にしばらく呆然としていたが、勝負がついてしまったことで興がさめたのか、野次馬連中はてんでバラバラに食堂から出て行く。ケンカをしていたオスカーとカイルも、別々の出口から出て行った。

 あいつらが暴れたせいで、めちゃくちゃになっているテーブルとイスを元に戻していたら、キリが食堂に戻ってきた。

「あ、キリ、ありがとう!」

ウリエラがそう言ってキリに飛びつく。

「なに、いいってことよ!」

キリは満足そうな顔をして、ウリエラに笑いかけている。

「なんだよ、告白して玉砕したってのに、ずいぶんと仲良いんだな」

エリックが俺の手伝いをしてくれながら、二人にそうたずねる。いや、エリック、どう考えてもさっきのは…

「あんなの芝居に決まってんだろう?あたしは、そう言う趣味はないんでね!でも、あれなら、どこにも角が立たなかったろ?我ながら良い案だと思ったよ」

キリがそう説明して高笑いを始めた…まったく、とんでもない思考の奴だが、今回は助けられたな。

「すまなかったな、キリ。礼を言う」

「あぁ?それはウリエラを守ってやったことへの礼か?」

キリは相変わらずニヤニヤと俺を見つめてそう言ってくる。

「違う。騒ぎを収めてくれたことについて、だ」

俺はそんなキリの態度を一蹴して、部屋の片づけを続ける。俺とウリエラとは、そう言うんじゃないんだ。あいつは確かに守ってやりたいやつだけど…好きだ、とか、そう言うのじゃないんだ。

 と、そんなとき、どこからか視線を感じた。なんだ…?気配のする方を振り返ると、そこには、中尉と少佐が居て、なんだか楽しそうに俺たちのことを見ていた。

「なにかご用ですか?」

俺は不機嫌そうな顔を見せて、そう言ってやった。しかし、二人はそんなこと気にも留めない、と言った様子で

「いやぁ、いいよね、さっきのケンカもなかなかだったけど、そう言うののあとに集まる、少年少女の仲間グループ、って感じ?」

「違いない。こうもまっすぐに育っている子どもがいれば、ジオンの未来も明るいってもんだ」

とわけもわからずに笑っている。ったく、なんだってんだ、この大人たちは。まるで俺たちを見て、ただ楽しんでいるだけじゃないか。部隊長ってことは、監督責任があるんじゃないのかよ。こんな勝手を許してて良い筈がないだろう?そう思って、何か言い返してやろうかとしたが、結局は口をつぐんだ。

何を言ったって、通じないだろうな、という確信があったからだ。こういう、のらりくらりした大人はいつだってそうだ。こっちの気持ちを考えもしないで…



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