過去ログ - ジオン女性士官「また、生きて会いましょう」学徒兵「ええ、必ず」
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◆tK49UmHkqg
[saga]
2013/09/18(水) 01:10:48.31 ID:DoNZuk/2o
営舎内は、一昨日の騒ぎが嘘のように、沈痛な沈黙に包まれていた。昨晩、戦闘で生き残った俺たちは、士官用の営舎に通され、そこで一晩過ごすように言われた。普段の物よりもすこし上等な食事を出され、やたらにふかふかのベッドで寝かされた。同じ晩、営舎の他の連中には、部隊長とオスカーの死が通達された。
今朝、学徒兵用の営舎に戻った俺たちを迎えたのは、どう声を掛けて良いのかわからないのだろう、部隊の連中の沈んだ表情だった。唯一、キリだけが大声を上げウリエラに飛びついてきて、憔悴した彼女を抱きすくめてくれた。
ウリエラだけではなく、キリは俺とエリックにも、大丈夫か、と一通り声を掛けてきた。俺もエリックも、大丈夫だとは答えたが、どうもキリには、そうは見えなかったらしい。キリは自分の隊の小隊長に許可を得て、営舎の中にある応接室を借り切り、俺たちを元気付けようとあれこれ気をもんでくれる。
ウリエラもエリックも、そんな彼女に励まされていたようだが、俺は、と言えば、ずっと上の空だった。昨日の夜までは、部隊長やオスカーの身に起きたようなことが、俺自身や、ウリエラの身に、近い将来起こりうるだろうことに恐怖していたが、それも今朝、目を覚まして、士官用の営舎で朝食を摂るまでのことだった。その席で俺が見たのは、イレーナ中尉の顔だった。
彼女は、絶望していたわけでも後悔していたわけでもなかった。部隊長達の死に恐怖しているのでも、悲しんでいるのでもなかった。だけど、何を感じてあんなに落ち込んだ表情をしているのかが、俺には分からなかった。俺は、なぜかそれが気になった。いや、そのことを考えることで、自分の中の恐怖を忘れようとしていたのかもしれない。
とにかくその晩、俺は、イレーナ中尉の部屋のドアをノックしていた。
「はい…待ってください」
ドアの向こうから声が聞こえた。ほどなくして、目に隈を作ったイレーナ中尉が、顔を出した。彼女は俺を見て、少し意外そうな顔をした。
「アレク…どうしたの、こんな時間に?」
中尉は、そんな当たり前のことを聞いてくる。俺は、単純に、理由を話すことにした。
「中尉の様子が気になって。少し、話をしませんか」
そう言うと、中尉はまた意外そうな顔を浮かべて、それから少し戸惑って様子を見せてから
「少し、待ってて」
と言って、ドアを閉めた。3分も経たないうちに、再びドアが開く。
「どうぞ、入って」
中尉は、静かにそう言って、俺を室内に招き入れた。
中尉の部屋は驚くほど質素だった。作りこそ、俺たち学徒用が使っている部屋とは違う物の、飾り気のない、殺風景な部屋だ。まだ、俺たちの暮らしていた研究所の部屋の方が植物が置かれていたり、写真が張ってあったりして、いろどりがあったように感じられる。
中尉は、俺にイスを勧めた。
「コーヒーくらいしかないんだけど、いいかな」
冴えない顔つきでそう言った中尉は、ぎこちない笑顔を見せて小さなキッチンの棚を覗き込んだ。
「あぁ、いえ、お気遣いなく…」
そう答えたが、中尉はそのまま二人分のコーヒーを淹れてくれた。
ベッドに腰掛けた中尉は、ズズっとコーヒーをすすってからため息をつき
「それで…私を慰めにでも来てくれたの?」
と聞いて来た。
中尉はやっと、すこし自然に笑った。その笑顔は少し悲しかったけど、さっきのぎこちない笑顔にくらべたら、まだマシだった。
「まぁ、そんなところです」
「ふぅん、優しいんだね、アレク曹長は。見かけによらず」
この感じは、強がりか?いや、少し違う、か。心配を掛けさせまいと、気を張っている感覚だ。小隊を率いるものとして、部下の前ではそうやって自分を保とうとするのは自然だろう。それでなくては、士気にかかわる。だけど、俺はそうは思いつつ、中尉がその下で何を考えているのか、知りたかった。
ただ、部下への配慮を欠かさない中尉が、それを話してくれる保証はない。いや、むしろ避けると考えた方が自然だろう。なにか、聞き出す方法はないのか…そう考えた俺は、一計を案じた。
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