過去ログ - ジオン女性士官「また、生きて会いましょう」学徒兵「ええ、必ず」
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25: ◆tK49UmHkqg[saga]
2013/09/18(水) 01:12:11.60 ID:DoNZuk/2o

「中尉は…ニュータイプ、って言葉を知ってますか?」

俺は、カードを取り換えた中尉に聞いた。

「知ってるわよ。その研究所から来たんでしょ、アレク達は」

なるほど、言葉の概念だけで実際がどんなことなのかは知らなかったか。

「ニュータイプっていうのは、他者との感覚共有を行える能力を持つ人間のことを言うんです」

「へぇ、感覚共有、ね」

中尉はそう相槌を打ちながら、相変わらず俺の顔をジッと見つめてくる。話をそらして、何かする、と思われているらしい。なら、イカサマの方はタネ明かしだ。

「そうですね。たとえば、今、中尉は、クラブの3と9、それからスペードの2と3。それから、ダイヤのキングを持ってますよね」

中尉の目を見つめ返してそう言ってやった。中尉は、まさか、と言わんばかりの顔をして自分の手札に目を落とし、信じられない、って言いだしそうに俺を見つめてきた。

「どういう、ことなの?私の頭の中が、読めるの?」

「それはちょっと違います。そこまで高度なことはできません。いや、もちろん、能力の高いニュータイプ同士は、ある種の会話もできるんですけどね…この力は、読むのではなく、感じる力なんです。俺は、中尉がカードを見た際の中尉の感覚を、読んだのではなく、感じ取ったんです」

中尉は俺の説明を半ば呆然としながら聞いている。

「だから、俺には中尉が何を考えているのかはわかりません。ですが、なにか考えていることがあり、それについてどう感じているのかは、うっすらとわかります。中尉は、苦しんでいますよね。本当は誰かに話してしまいたいのに、それができない。どうしようもなく苦しい何かを…俺はそれを、罪悪感に似た何かだという風に感じてますが、とにかくそれを、無理矢理押し殺して平気な顔をしようとしている。俺たちに、なんとか明るく振る舞おうとしている。俺にはそれが分かります。だから、中尉の話を聞きたいと、そう思いました」

中尉は黙っていた。微かに、瞳を潤ませているのに俺は気づいていた。どれくらいの沈黙が続いたか、しばらくして、中尉が口を開いた。

「誰にも言わないって、約束してくれる?」

「えぇ、誓って口外はしません」

俺はそう答えると、中尉はまたしばらく黙ってから、ふぅ、と深いため息をついた。

「私にはね、妹が居たの」

「妹?」

「ええ。生きていれば、ちょうどあなた達と同じくらいの歳だわ」

そう言って、中尉は語り始めた。
 


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