過去ログ - ジオン女性士官「また、生きて会いましょう」学徒兵「ええ、必ず」
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51: ◆tK49UmHkqg[saga]
2013/10/06(日) 03:00:45.73 ID:TlS2R9dP0

 ラウンジはもともと倉庫だったところに用意されていて、チューブに入った飲み物や流動食なんかが置いてあった。

だが、ほとんど誰もがそれに手をつけることなく、思い思いの場所に身を縮こまらせていた。ほとんどどの顔も、恐怖と疲労にくぐもっている。

 「アレク!」

中尉だ。彼女は、イスに腰掛けてうなだれている学徒兵の一人一人に声を掛けているところだった。その作業を中断して、彼女は俺のところにやってきた。

「大丈夫?」

彼女は俺の顔色を伺うように聞いてくる。

「はい、ご心配おかけしました」

あえて、丁寧に敬語で言ってやったら、彼女もニヤっと笑ってくれた。

「そう、なら、他の隊員のケアをお願いできるかしら?」

「ええ、任せてください」

そう言葉を交わして、向きを変えようとした刹那、彼女は俺の肩をポンと叩くのと同時に、人差し指で微かに俺の唇に触れた。

とたん、枯れ果てそうになっていた胸のうちに、あたたかなものがともるのを感じた。まったく、あの人は…本当に人の心に余裕を滑り込ませるのが上手い人だ。

この部隊の精神的支柱を立派に果たしてる。俺も、うかうかしていたら、またあの人を1人で戦わせることになってしまう。

宇宙酔いなのか、感覚酔いなのか分からない吐き気にやられている場合ではない。

 俺も中尉にならって、うなだれるほかの隊員のあいだを回ることにした。だが、とりえずはウリエラ達だ。

 ウリエラは、エリックとキリと一緒にいた。3人は、思っていた以上に消耗した様子はなかった。

「あ、アレックス!もう大丈夫なの?」

「あぁ、すまなかったな。ちょっと気を張りすぎていたみたいだ」

俺がなんでもない、という表情を見せて言ったら、ウリエラは嬉しそうな表情をして笑った。

「お前の方こそ、大丈夫かよ?あんな戦闘で、気持ちがやられてないのか?」

俺が聞くと、ウリエラは苦笑いを浮かべて、

「能力が強いとね、割とこういうことは良くあるんだよ。だから、そういうのを遮断する方法ってのも、自然と身についていたりするんだよね」

と言って肩をすくめた。そうか…まぁ、ウリエラがあの悲惨な声を聞いていないのなら、それに越したことはない

「そうか…それなら、良かった。お前は大丈夫かよ、エリック。漏らしてないか?」

今度は俺はエリックに話を振る。エリックはすこし興奮した様子で

「ア、アレク!見たかよ!俺、3機、3機やったんだぞ!モビルスーツ1機に、ミサイル艇2機だ!」

と言ってくる。まぁ、恐怖と絶望で押しつぶされているよりはいいが…これはこれで、問題だな。

調子に乗って飛び出して、戦線を乱せば…防衛ラインの自壊のきっかけになる可能性だってある。ここは釘を刺しておく必要がある、か…。

「バッカ!まぐれ当たりで喜んでんじゃねえよ!あいつらはまだ、戦闘もろくに知らない、アタシらとおんなじような連中だ。

 これから本隊が出てきてみろ、同じ調子でやってたら、一瞬であの世行きだからな!」

俺が言う前に、キリがそう言ってエリックを小突いた。キリ、お前は本当に、頼りになるよな。



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