過去ログ - モバP「光」
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4:以下、新鯖からお送りいたします[saga]
2013/09/21(土) 01:55:56.22 ID:8ucU1b060
「さあどうする、ショウテンガイ」

「こうなったら仕方がない。そこの君、力を貸してくれ」

 ステージ上で腑抜けていた俺はぼんやりと、まだ増やすのか、なんて思っていた。でも仕方がないなら仕方がない。

「おおっ! アタシの出番だな!?」

 ショウテンガイに請われてステージに上がってきたのは、ステージ前で一番熱心に声援を送っていた女の子だった。
 マイクを通さずとも非常によく通る声であった。雰囲気が一瞬、明るくなった。

「おのれデフレスパイラル! 人質を取るなんて卑怯なマネは、この南条光が許さないぞ!」

 もはや彼女が完全にこの場を支配していた。
 不思議なことに、どんなまずい演劇であってもその劇固有の時間のようなものが流れているもので、それはこの茶番においても例外ではなかった。ところが彼女、南条光はこの、役者と観客が渾然一体となってげんなりするような時間および空間を一瞬で塗り替えたのである。
 咄嗟に俺は叫んでいた。突破口はここしかない、と瞬時に悟ったためである。

「ヒカルー! 助けてぇー!」

 懇願するような響きであった。
 乳飲み子が母を慕って泣くような、心底から発せられた叫びであった。

「ああ、任せてくれっ! さあ行こう、ショウテンガイ!」

「応」

 相変わらず役者の盆暗どもは棒読みだった。俺も基本的にやることのないポジションで棒立ちだった。
 ただ光だけが嘘くさく、わざとらしいほどに輝いていた。



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